キャリアについてのよしなし

MBAで元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成の戦略と定石を解説します 現在は不定期更新

短期離職はどのくらいまで許容されるのか?【人事の本音】

「短期で辞めると”我慢のできない人材”とみなされて転職しづらくなる」といったことを聞いたことのある人も多いでしょう。

 短期離職はどのくらい許容されるものでしょうか?どういうケースでは辞めてしまうべきで、どういうケースなら現職に留まるべきでしょうか?短期で辞めると次の転職にどの程度不利になるのでしょうか?

f:id:career-yoshinashi:20200617193318p:plain

私は現役の採用担当なので、こういった疑問への人事側の本音をお伝えしたいと思います。また元転職エージェントとして多数の会社を見てきているので、一般的な短期離職のボーダーラインについても解説します。

「このタイミングで辞めるのはどうかなぁ・・・」と迷うケースについてはコメント欄で相談も受付中です。
→実際に相談くださった方、ありがとうございました!

 

 

もくじ 

 

大事なのは短期離職カードを意識すること

実は10年ほど前までは短期離職は多くの会社で嫌われたものでした。ところが近年この状況は徐々に変わりつつあります。私は元エージェント・現人事として長年転職市場を見てきているのですが、今の市場感を言葉にすると 

「短期離職カードの許容する範囲でなら問題ない」

 

という感じなのです。ちょっと説明します。

 

じつは転職が一般化した現在、1社くらい短期で離職・転職してもさほど悪影響はありません。また2社ほど短期離職しても、間に長く続いた会社があればこれもあまり問題になりません。

 

つまり、多くの人の場合、1〜2回分の「短期離職カード」を持っていて、このカードを切ろうと思えば切れる状態だとイメージしてもらえばよいです。

 

どのくらいの期間で短期扱いになるのか

ところでこの「短期」とはどのくらいの期間をさすのでしょうか?

 

一般的にはIT業界などの転職が一般的な業界だと2年未満、その他の色々な業界の平均的な水準が3年未満といったところで、これを下回るとやや短いイメージをもたれます。

f:id:career-yoshinashi:20211120171827p:plainただし2年11ヶ月と3年1ヶ月の間に大きな差があるわけではありません。「だいたいこれくらい」というイメージだと思ってください。

あなたの短期離職カードの枚数

「短期離職カードをどのくらい持てるか」は諸条件によって変動します。

 

たとえば下記の項目に該当する人はその分少し多めにカードを持っていると考えてOKです。

  • IT・ソフトウェア・医療・アパレル販売などの人材の流動性が高い業界や職種
  • 外資が長い
  • イノベーション関連の職種(プログラマーなど)
  • バックオフィスの職種(経理・人事など)

※イノベーション職種・バックオフィスの職種についてはこちら

上記に該当する人たちはいずれも頻繁に転職する傾向があり、その分短期離職カードも多めに持てます。(このあたりは以前に別の記事でも説明しました)

 

逆にカードが減る状況もあります。たとえば地方、特に保守的な土地では短期離職が受け入れられづらくなります。

f:id:career-yoshinashi:20190720185324p:plain

このあたりはかなりケースバイケースです。余人をもって代えがたいスキルを持っている人なんかは5〜6回短期離職があってもどうということはないです。(迷うようならコメント欄で質問してみてください)

f:id:career-yoshinashi:20211120171827p:plain年齢にもよりますが、おおむね3社以上短期離職があると市場価値に多少の悪影響がではじめることが多いと思います。

ケーススタディ

では具体的な事例を見てみましょう。

事例1 メーカー営業の山田さん(仮名)の場合

2010年4月
A社に就職(1社目)
2011年10月
A社を退職 ←勤続1年6ヶ月で退社
2011年11月
B社に入社(2社目)
2019年12月
B社を退職 ←勤続7年1ヶ月で退社
2019年1月
C社に入社(3社目)
2019年12月
C社を退職 ←勤続1年で退社

この方の場合、A社C社は短いですが間のB社が約7年と長めになっています。そうすると採用する側としては「この人はマッチすれば長く働ける人なんだな」という見方ができます。そこで面接でこの方が転職先に何を求めているのかをよく確認し、それが自社とマッチしていればA社・C社の短期離職があっても採用しよう、となるわけです。

 

では別の事例です。私の個人的な知り合いのケースを本人の承諾を得て紹介します。

事例2 ITエンジニアの鈴木さん(仮名)の場合

2008年4月
D社に就職(1社目)
2008年12月
D社を退職 ←勤続9カ月で退社
2009年1月
E社に入社(2社目)
2009年12月
E社を退職 ←勤続12ヶ月で退社
2010年3月
F社に入社(3社目)
2013年6月
F社を退職 ←勤続3年3か月で退社

この方の場合業界がITです。ITは短期での転職が一般的です。

このため新卒から2社連続で短期離職になりましたが問題なく3社目も入社できました。3社目はこれまでより長くで3年強、この時も2か月程度の活動で難なく転職先を見つけています。

ITだと割とこんな感じの方が多いですね。

 

このあたりは本当に業界や職種、年齢などによってケースバイケースなので、エージェントに相談するか、もしくはこのサイトのコメント欄で質問いただければと思います。

逃げの転職は悪くない

仮に今あなたが入ったばかりの会社を早くも絶望的に辞めたくなっていたとします。

 

こんな時、実際に辞めるかどうかは別にして、自分には1〜2回分の短期離職カードがあるんだと思えばちょっと気が楽になるのではないでしょうか。

 

ちなみに私は過度なストレスを感じているなら逃げの転職もアリだと思っています。

f:id:career-yoshinashi:20211120171827p:plainキャリア形成というのは約40年の長丁場なので、長期的にパフォームし続けることが大事です。そのためには潰れないことが何より大事です。

3ヶ月未満の在籍なら書かなくても良い?

ついでに書いておくと、ネットを見ていると「3ヶ月未満の在籍の場合は履歴書に書かなくても大丈夫ですよ」なんてアドバイスを見ますがが、まぁやめておいた方がいいでしょう。

 

会社によっては外部調査会社を通じてバックグラウンドチェック(応募者の経歴・背景調査)をかけたりするので、それであっさりバレたりします。

 

ちなみに私の会社もバックグラウンドチェックをやってまして、以前そこの営業の人に話を聞いたことがあるのですが、細かい経歴詐称とか履歴書の誤りについては業種によるものの、平均すると7%くらいの割合で出てくるそうです。

www.career-yoshinashi.com

あとは普通に知人経由でバレたりもします。バックグラウンドチェックを実施する会社は増えているようですので、履歴書・経歴書は正確に書いた方が良いです。

 

大事なのは新卒カードより短期離職カード

よく「新卒は最も自分を高く売れるチャンス、新卒カードを意識せよ」みたいなことが言われると思います。

 

ただ私に言わせれば自分を高く売って良い会社に入ったとしても、ミスマッチのリスクはあります。むしろ職歴がなく自分のことがよく分かってない新卒の時ほどミスマッチが起こりやすい。

 

 

したがって長期的なキャリア形成で大事なのは「新卒の時に完璧にマッチする良い会社に入る」可能性を高めようとすることではありません。

 

ミスマッチはそれなりの確率で起きてしまうという前提で、いかに「短期離職カード」を有効活用して軌道修正するかが大事です。

 

 

下の記事は短期離職に関連したQ&Aの事例です。やむにやまれぬ事情で短期離職を繰り返してしまったとしても、転職を成功させる方法はあります。落ち着いて良い転職先を見つけたいですね。

 

www.career-yoshinashi.com

 

(C)2019 career-yoshinashi All rights reserved.

)