良いキャリアをつくるためには、2つの軸で自分の【マーケット選択】をすることが決定的に大事です。これが年収・安定性・出世などあらゆることに影響をおよぼします。今回はこの【マーケット選択】について解説します。
【目次】
- 20代が終わるまでに勝負する土俵を決める
- なぜ28歳までに職種を選択するべきなのか?
- 「28歳=第二新卒マーケットの年齢上限」までにFMBIを選択しよう
- 自分の向いているカテゴリーを知ろう
- なぜ28歳までに住む場所を決めるべきなのか?
- まとめ
20代が終わるまでに勝負する土俵を決める
以前のエントリーで、自由度の高いキャリアを実現しよう、という話をしました。
それにもつながる話なのですが、良いキャリア形成のために決定的に大事なのは20代が終わるまで(だいたい28歳まで)に適切な土俵=マーケットを選ぶことです。
ここは多くの人が間違えるところですが、しゃにむに自分の市場価値(マーケットバリュー)を上げるための努力をするより、まずは土俵選びが大事です。逆にいえばここが合ってれば大体うまくいきます。
そしてジョブマーケット(就職・転職市場)は以下のように区分することができます。
職種×業界×土地(住む場所)
例を挙げてみましょう。
- 法人営業 × 金融業界 × 首都圏
- 経理 × 住宅業界 × 北海道
こんな感じです。
そして良いキャリア形成で特に大事なのは、職種・業界・土地の3要素のうち、職種と土地(住む場所)を28歳までに選んでしまうことなのです。
なぜ28歳までに職種を選択するべきなのか?
3要素のうち最も重要なのは職種です。ホワイトカラーの仕事の場合、世のほとんどの職種はキャリア形成の観点からは4つに分類することができます。
差し当たりここではその4つをフロントオフィス職種・ミドルオフィス職種・バックオフィス職種・イノベーション職種と呼ぶことにします。
(フロントとかミドルという言い方は金融業界の用語を借用しています。一般的な言い方でははなく、私が適当にそう呼んでるだけです)
この4つ(Front、Middle、Back、Innovation=FMBI)の選択がキャリア形成において大事なのは、この4つのどれを選ぶかによって年収アップ・出世・マーケットバリュー向上などなど、すべて適切な戦略が変わってくるからです。求められる資質や性格も違います。カテゴリーによって安定性も違います。
だからこそ自分のキャリア上のゴールや自分の性格に応じて職種を選ぶ必要があるのです。
「28歳=第二新卒マーケットの年齢上限」までにFMBIを選択しよう
この職種選びをある程度自由にできる上限年齢がだいたい25〜28歳です(※1)。この年齢までならどのカテゴリーでも「未経験OKの求人」に応募したときの合格確率が高く、4つのカテゴリーをまたいだ転職ができます。
こういう未経験OK求人による特殊なジョブマーケットが「新卒・第二新卒マーケット」です。
逆にいうと30代以降は基本的にFMBIをまたぐ転職はできません。
経験がないと営業から経理には移れませんし、未経験ではプログラマーにはなれません。それでも大幅なキャリアチェンジを狙う場合、少し特殊な戦略が必要になります(下記関連記事)。
繰り返しなんですが、FBMIはそれぞれ全然ちがいます。それぞれのカテゴリーに向いているタイプもバラバラですし、必要なキャリア戦略もちがいます。
だからこそ、第二新卒マーケットにアクセスできる間に、自分がFMBIのどこで勝負していくのかを見極め選択することが本当に大事です。このことはエージェントの間では常識なのですが一般にはあまり知られていません。
自分の向いているカテゴリーを知ろう
では自分に合ったカテゴリーを選べるようにFMBIそれぞれの特徴を、
①高年収型か安定型か
②適性
③評価の軸
の3つの観点からお話しします。
①高年収型か安定型か
まず、色々例外はありますがざっくりいうとこの4つの職種は年収・安定性という軸において下記のような特徴があります。
まず年収ですが、多くの会社は競争力の源泉となっている部門にお金を回します。結果、そういう部門は高給になりやすい。
FMBIのうち、企業の競争力の源泉になるのは基本的に商売をとってくるフロントオフィスの職種か、製品を生み出すイノベーション職種です。そのためこの2つは年収が高めになります。たとえば製薬メーカーで一番年収が高いのはだいたい研究開発の人たちです。サービス業で一番の高級取りは営業部長で、経理部長なんかはだいぶ劣ります。
ミドルオフィスの職種は会社によって異なります。たとえばアマゾンのロジスティクス、P&Gのマーケティングといった、ミドルオフィスが競争力に直結している会社もあり、そういう会社だとミドルオフィスもかなり年収が高くなります。なので会社選びが大事です。
バックオフィスの職種は通常会社の競争力を大きく左右しません。会計処理が正しく行われているかは大事ですが、こうしたバックの仕事は直接商売をつくりません。そのためフロント職種やイノベーション職種と比べて社内で給与が低く設定されることが多くなります。
一方で安定性ですが、これは業界をこえてツブシが効くかどうかに左右されます。あるいは「業界横断型か、特定業界特化型か」と言い換えることもできます。
バックオフィス職種は業界横断型です。基本的に何歳になっても業界を超えた転職ができます。たとえば人事のプロは飲食業界でもIT業界でも活躍できるので、ある業界が傾いたとき他の業界に逃げ込むことができます。だから職種としては安定します。ミドルオフィスも基本的には業界横断型ですが、バックにくらべると業界経験が重視されます。たとえばアパレルの会社なら同業のアパレルでマーケティングをしてた人の方が採用されます。
一方でフロントオフィス(営業・販売など)は、キャリアの途中までは業界横断型ですが、だいたい35歳あたりから業界に特化する傾向にあります(※2)。したがって自社の業界が落ち込むと転職先が限られ苦しい展開になりやすい。たとえば半導体営業は高年収ですが景気変動が激しい業界なので、不況時にはちゃんとマーケットバリューをもっていないと食いっぱぐれます。
最後にイノベーション職種はスタートからほぼ業界特化型です。たとえば「バイオの研究者」なら、ヘルスケア・ライフサイエンスに関連した企業や団体等で生涯働いていくことになります。したがって長期的に将来性のありそうな業界で働くことが大事ですし、また業界えらび次第で生涯年収に決定的な差がでるため、最初の選択が超重要です。
ここまでの話を図にするとこんな感じです。
②適性
どんな人が向いているか(=適性)もFMBIによって大きくことなります。
モチベーション・やりがい面の適性
基本的に顧客に近いフロントオフィスや製品に直接携わるイノベーション職種はビジネスに直接携わっているという実感・やりがいを得られやすい面があります。たとえばときどき営業事務から営業に転職する方がいますが、このパターンは「もっと顧客から直接ありがとうと言われる仕事がいい」「もっと前線で活躍したい」といったモチベーションのことが多い。
一方でミドルオフィス・バックオフィスは直接顧客や製品に携わる機会が限られるため、そのやりがいはより間接的な「縁の下の力持ち」的なものになります。これは人によって向き・不向きがあるので注意が必要です。
コミュニケーション面の適性
傾向として、顧客・マーケットに近づけば近づくほど社外・不特定多数とのコミュニケ―ションが発生します。バックオフィス・イノベーション職種は社内の特定の相手との仕事が中心です。これもどちらが良いとかではなく、向き不向きがでるポイント(かつやってみないと向き不向きがわからないポイント)です。
③評価の軸
職種によって評価のポイントも違います。ここについては下記のエントリーにまとめました。
④年収を高めるのに出世が必要かどうか
職種によっては出世せずプレーヤーにとどまるほうが高い年収になることもあります。これについては下記エントリーにまとめました。
★★★
これまで見てきたように自分にあった職種選びをすることはとても大事なのです。にもかかわらず、職種選びには年齢による期限がついてしまっている。これを知らないでいるといつの間にか自分に向いてないマーケットで一生を過ごすことになってしまうのです。
なぜ28歳までに住む場所を決めるべきなのか?
ということで28歳までに決めるべきポイントの一つとして職種選びを話してきましたが、もうひとつ決定的に大事なのが土地=住む場所の選択です。
下記のエントリーでも詳しく書いているように、住む場所の選択は年収に決定的に影響を与えます。
一方、多くの人は結婚し配偶者を得たあとだと、さまざまな理由で土地を動きづらいことが多い。
ちょうど28歳〜34歳の間くらいで結婚する人が多いことを考えると、なるべく28歳くらいまでに住む場所の選択は済ませておくことが望ましいでしょう。
まとめ
ということでまとめると、
- 良いキャリア形成のために、おおむね28歳までに①職種と②住む土地を決めよう
- 職種の選択は年収・安定性・やりがいといった様々な点で影響をおよぼす
- 土地の選択へ年収への影響が大きい。一般的な適齢期までに土地の選択をすませよう
ということでした。
関連記事です。30代以降でもFMBIをまたぐ転職の実現の仕方について。
20代の間に職種や住む場所を変えることで、市場価値を高めることもできます。
注釈
※1 ちなみにこの「未経験OK」の募集ですが、年齢制限は明記されていないことが多いです。法律でそうなってます。そうなってるんですけど、実際は日本では年齢による足切りが横行してしまっているのでだいたい28を超えると不合格になります。
※2 実際に転職サイトで検索すると「業界未経験OK」な営業職の募集がたくさん見つかると思いますが、これらはだいたい30代前半~中盤位までが実質的な上限です。それ以降は多くの場合業界経験が必要になります。