この仕事をしていてよく頂くご相談が、
「会社を辞めたいのだけど、今辞めると短期離職になってしまう。辞めることについてどう思いますか?」
というものです。前から書いているようにこれはケースバイケースなのですが、やはり典型的な「辞めるべきケース」「残って様子を見てもよさそうなケース」があります。
今日はこれを解説したいと思います。
②短期離職・短期転職を繰り返した人が転職を成功させるには
③たとえ短期でも辞めた方が良いケース、残った方がいいケース
④転職活動で退職すべきか留まるべきかの判断の仕方
辞めるべきケース
ではまず、早々に辞めるべきケースから見ていきましょう。
倫理的な問題・コンプライアンス面での問題がある場合
まず今の職場にコンプライアンス的な問題がある場合や、自分の倫理観と明らかにそぐわないことが起きているような場合は無理に居続けるべきではないでしょう。
たとえばこんな事例が考えられます。
- 会社が粉飾決算かそれに近いことをしている
- ハラスメントがまかり通っている。それを上層部に報告するための仕組みもない
- 業者の癒着、無茶苦茶な縁故採用などの利益相反が常態化している
なぜこういう会社に居続けるべきではないのか。
ひとつは会社に都合よく利用されるリスクがあるからです。
一昔前までは会社を守るために悪事を働いた社員に報いるような企業がたくさんありました。2011年のオリンパスの不正会計なんかはその事例の一つではないでしょうか。
ところが、慶大の教授でキャリア分野で有名な高橋俊介さんは「キャリアショック」という本の中で、もはやそういう悪しき慣習が過去のものになりつつあることを指摘しています。
昨今では会社が不祥事を起こしたとき、不祥事の手先として動いた社員を守らなく(あるいは守れなく)なってきている。
そのためコンプラ的に問題のあることを指示されたとき、「お上の指示だから」と思ってそれに従っていると大きな代償を支払わされるようになってきているのです。
そのため自分で、自らの倫理観に基づいて自分の責任で判断する。その結果、もしその会社が不正を正さないようなら自ら離れる。私達にはそういう姿勢が求められてきているわけです。
またビジネスの世界にも明確には違法ではないグレーゾーンはたくさんあります。そのため自分はどこまでならOKとするのかという職業倫理を確立させることも大事です。それは自律的なキャリア形成をしていくための判断基準にもなります。
あきらかにメンタルや体調に悪影響が出てきていて、休職もできない場合
2つ目は健康に影響が及んでしまっている場合です。
いつも書いていることですがキャリア形成は長丁場のマラソンです。長く良いパフォーマンスを継続できる人の方がが瞬間最大風速で活躍できる人より良いキャリアを築けます。
私が言うまでもなくメンタル・フィジカルともに大きな傷を負ってしまうと回復が難しくなりますから、そうなる前に勇気をもって辞めるという判断をすべきです。
様子を見るべきケース
出は逆に短期離職せずに踏ん張って様子を見ても良いケースを見てみましょう。
人事異動が頻繁な環境で人間関係がストレスになっている場合
上司や周囲の人間関係がストレスになっていて
かつ、その会社の離職率が高かったり頻繁な人事異動が起きている
ときは様子を見てみる価値があります。
私の例ですが、人生最初の上司は顔を見るだけで胃液が上がってくる感じがするほど苦手な相手でした。
「これをあと何年続ければいいんだろう・・・」
と毎日ため息をついていたのですが、入社して1年半したところでその上司は地方拠点に異動していきました。こんなふうに離職率や異動の多い会社の場合、人間関係は常に流動的だと考えておきましょう。
(余談ですがその方はとにかく部下を理詰めしてくるタイプで、ひどい時は夜9時から2時間ツメられた記憶があるのですが、意外とそういうタイプって脆いところがあったりしますね)
人事異動が頻繁な環境で、仕事内容に不満がある場合
同じく人が流動的な環境では、仕事内容もコロコロ変わります。
仕事がつまらない、やりたい仕事ではないといった不満があるとき、もしこのような環境なのであれば多少待ってみると数カ月でガラっと状況が好転することがありえます。
★★★
このように「辞めるかどうか」という判断は「その会社に入社すべきかどうか」と同じくらい難しい判断です。
つねに「正しい判断」をし続けることはできません。ただし「納得のいく判断」をすることはできます。それには明確な価値基準を持つこと、納得のいくまで情報収集しそれをもとに考え抜くことが大事ですね。
関連記事です。価値観の明確化は幸福感の高いキャリア形成のためにはとても大切です。
会社がヤバい時の情報収集について。