キャリアについてのよしなし

MBAで元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成の戦略と定石を解説します 現在は不定期更新

(プロが教える年収アップ戦略②) GAFAの儲けに乗っかって年収を上げる方法

さて年収アップ戦略の2回目です。今回は具体的な戦略について書いていきたいと思います。

各回の記事はこちら↓

年収決定の2つの仕組み

前回、年収アップのためには「仕組み・構造に乗ること」が大事だとお話ししました。今回から書いていく具体的な戦略論では以下2つの仕組みを利用します。

1 同じマーケット内では、個々の年収は平準化する
2 一人一人の年収は「利益×分配率×分配方法」で決まる


仕組み① 同じマーケット内では、年収は平準化する

転職市場は一つではなく業界・職種・土地などで細かく分けることができます。いわゆるマーケットセグメンテーション(市場区分)ですね。転職の多くは同じセグメントの中で起こります。

 

このように同じ範囲で人がたくさん行き交うと、セグメント内の人たちの給与水準はお互いに近づいていきます。

 

つまり給料の高い人は低くなる圧力が、低い人は高くなる圧力がかかっていく。

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簡単に言うと、給料が相場よりも高い会社は
「他の会社から手頃な給料で人を採用できるじゃん!」
と考えて給料を抑え気味にします。

 

逆に相場より給料の低い会社は、
「今の給料水準だと全然採用できない!」
と気づいて給料水準を引き上げます。

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当たり前ですね。これを平準化と呼びます。

 

同じマーケットにいる人どうしは平準化の圧がかかります。逆に分断されてるマーケットの間では平準化圧はかかりません。

 

たとえばバンガロールのIT営業マーケットと東京の経理マーケットの間では平準化圧力はかかりません。

(バンガロール)

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出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/バンガロール

 

仕組み②  一人一人の年収は「給与原資×分配方法」で決まる 

年収は以下2つの要素の掛け合わせできまります。

  • 給与原資…会社が確保している給与支払いのためのお金の総額
  • 分配方法…各社員にそれぞれどういう基準でどうやって給料を払うか(例:年功序列か成果主義か、評価制度をどうするか、など)

この2つのうち、給与原資はほぼビジネスモデルで決まります。つまり業界選びです。

 

たとえばハーバードビジネスレビュー2018年8月号で、大手ヘッドハンティング会社・コーンフェリーの上級管理職の方はこう書いています。

「企業間の給与格差が広がっているようだが、その原因については依然として議論が続いている。(中略)筆者の経験では、企業の給与水準を最も大きく左右するのはビジネスモデルである」

このビジネスモデル(=業界)が年収の大きな割合を決めるというのが2つ目の仕組みです。


年収最適化戦略1:レントの中心に近づいて上げ潮に乗る(レント上げ潮戦略)

さてここからがキモです。

2つの仕組み 
「① 同じマーケット内では、年収は平準化する」と
「② 一人一人の年収は「給与原資×分配方法」で決まる」
を組み合わせることで今回お話しする年収アップ戦略を導くことができます。

 

つまり、
給与原資の大きな業界で働く人たちが多数いるマーケットに身を置き
平準化の圧力で年収を上げる
ということです。

 

実は私が転職市場を長年ウォッチした結論として、会社員で高年収を得ている人の多くがこの戦略を活用しています(無意識にこの戦略にあてはまってただけの人が多いですが)。

 

全体的に年収の高いマーケットに身をおいて何度か転職すれば、平準化の圧力である程度勝手に年収は上がります。普通に働いていればいいだけです。

 

これは同じ湾に浮かんでる船が満潮時にはみんな押し上げられるのに似ています。 ということでこれを上げ潮と呼ぶことにします。

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大事なのはレントが大きくて成長していること
ではどうすれば上げ潮に乗れるのかというと、
 (i) レントが大きくて (ii) 成長している業界に近づくこと(≠入ること)
です。

 

よりイメージしてもらえるように、それぞれちょっと解説しましょう。
(i)レントが大きい
レントというのは経営学の概念で、日本語では超過利潤と訳します。これは会社が構造的に得ることができる普通以上の利益を指します。

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たとえば、
特許や著作権などで優位性が守られていて、原価の割に高い値付けができる(製薬とか)
始めるのに巨大資本が必要になるので、利益を数社で寡占できる(資源メジャーとか)
サービス使用のためのプラットフォーム化していて、その”場所代”分の利益を独占できる(カジノとか)
・・・といった構造とかビジネスモデルで得られる利益がレントです(レントは場所代とか家賃という意味の英語からです)。レントが大きいと給与原資を大きくとりやすくなります。


少し前に流行ったピケティの本でも言われているように、現代は企業の超過利潤が極大化している時代です。その良し悪しはともかく、一個人としてはその状況を活用すべきです。


(ii)成長している
また産業として成長していることも重要です。成長している産業はたくさん採用しているのでレントの近くに行くチャンスが生まれます。また成長していると、中の人たちは平準化による年収下げ圧力を受けません。

 

 

で、いま成長して、かつもっとも大きなレントを得ているのはやはりGAFA(Google, Apple, Amazon, Facebook)をはじめとしたTech系企業でしょう。 これらはインターネットサービスのプラットフォームになることで圧倒的なレントを得ています。

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他にもいくつかこういう業界があります。製薬などのヘルスケア産業もそうです。ただ話をシンプルにするためいったんここから先レントの大きな業界を指してGAFAと言ってしまうことにします。

 

さてこうした企業は成長しているのでガンガン採用市場に入ってきます。 有り余る利益=レントによる暴力的な資金力を持つ彼等が参入してきた市場では全体の年収相場が上がります。これが上げ潮です。

 

そこでなるべくこういった高年収を得ている人たちと同じか近い土俵に身を置き、人材マーケットで競合できるようにしましょう。そうするとある程度勝手に年収は上がります。これがレント上げ潮戦略です。

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ちなみにこの戦略は技術系の人材でなくてもとれますし、必ずしもIT業界に転職する必要もありません。以下でこの点を含めた具体的な戦術を説明します。

 

具体的な戦術ーStep1:20代の間に1度転職して方向づける

まずなるべく20代の間に1度転職をして、自分のキャリアをレントの中心に方向付けます。この段階では上げ潮に乗ることより、上げ潮に乗れる環境に身を移すこと目指します。なのでこの段階では年収はあまり上がらなくてもOKです。

 

さて方向付けの仕方は2つあります。

 

一つは直接レントの中心に入っていく方法です。つまりITソフトウェア業界への転職ですね。図の濃いオレンジのゾーンです。

 

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 職種はなんでもいいのですが、レントは構造でもたらされる利益なので、構造を作ってくれる職種がもっとも上げ潮が強い。具体的にはプログラマーやデザイナーといったイノベーション職種です。

 

もちろん営業などのフロント職種、マーケティング等のミドル職種、経理・人事などのバックオフィス職種でも問題ありません。ただし基本的にはフロント>ミドル>バックの順に上げ潮の効果がでます。

 

ちなみになぜ20代かといえば、20代の間だと職種のカテゴリーを超えた転職が可能なぶん実現しやすいです。これについては以下の記事を。

 

二つ目はGAFAへのサービスプロバイダーになるという方法です。たとえば、

  • Techに特化した法律のスペシャリスト
  • 技術職のためのオフィスコンサル
  • イノベーション人材の人材紹介
  • 高性能サーバーの営業
  • ハイテク業界に強い経営コンサル

といったかんじ。

 

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これらは実は転職市場では、

  • Techに特化した法律のスペシャリスト →GAFAの法務担当と競合する
  • 技術職のためのオフィスコンサル →GAFAの総務オフィス担当と競合する
  • イノベーション人材の人材紹介 →GAFAの採用担当と競合する
  • 高性能サーバーの営業 →GAFAのインフラエンジニアと競合する
  • ハイテク業界に強い経営コンサル →GAFAの経営層と競合する

といった具合に、GAFAで高年収を得ている人たちを同じマーケットで争うことになるので上げ潮に乗れます。

 

この際、GAFAの人たちが持っていそうなスキルを身につけることでより競合しやすく、つまり同じ土俵に乗って上げ潮を得やすくなります。たとえば英語力ですね。

 

具体的な戦術ーStep2:20代後半〜30代にかけて1〜複数回転職して、上げ潮に乗る

このように20代の間に方向付けをしておいて、20代後半~30代の間に何度か転職をすることで最大限の年収アップを実現できます。


その際、無制限に転職しまくるとマーケットバリューが棄損する可能性があります。以下の記事を参考に、自身の「短期離職カード」を意識しながら動くことで年収を最大化できます。

www.career-yoshinashi.com

このタイミングでは将来のマーケットバリューへの投資と、時期を見た投資回収がだいじです。これについては次回説明します。

 

以上がレント上げ潮戦略の大枠です。繰り返しですが、こと年収については下手に努力するより、こういう仕組みや環境の力を活用する方がよほど効きます。このことはぜひ意識して頂きたいですね。

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