社内公募制度を取り入れる会社が増えています。そしてそれとともに自分の意思でキャリアを切り開いていなければならくなる時代がきます。
今回はそもそも社内公募制度とはなんぞや、といった話から始めてそのメリットデメリットや出世・年収への影響などを解説します。特に今現在まさに、
うちの会社こんな社内公募もあるんだ!応募してみようかな?
と迷っている方に参考になればと思います。
私は現役採用マネージャーなのですが、社内公募に関する取りまとめも私の部署で担当しています。その経験を踏まえて具体的にお伝えします。
【目次】
- そもそも社内公募制度とは?
- 辞令や自己申告制度との違い
- 本当に社内公募で部署を移れるの?
- 社内公募のメリット・デメリット
- 社内公募は出世や年収アップにプラス?マイナス?
- これからは自律的なキャリアの時代
そもそも社内公募制度とは?
社内公募制度とは会社の中で欠員が発生した時に社内で広く応募者を募り、興味がある人が「転職の時のように」応募するという仕組みです。
多くの会社での基本的な流れは以下のとおりです。
- どんなポジションが社内公募にかかっているか確認
- 応募締切までに履歴書・職歴書等を送って応募
- 書類選考(ない会社もあり)
- 面接
- 合格&異動タイミングを調整
- 異動
このように社内公募は社内で転職活動をするのに近いプロセスを踏むものだと思ってください。
辞令や自己申告制度との違い
辞令・自己申告制度・社内公募、いずれも社内異動の方法です。
このうち辞令が最もトップダウンで、断ることができません。
自己申告制度は社内公募と似ていますが、こちらは社内公募より緩くて、「私は将来的にこういう職種にチャレンジしたいです」「こういう勤務地に行きたいです」みたいな大まかな希望を会社につたえる仕組みです(会社によりますが)。
それでその希望を会社側が考慮するかどうかは会社次第、そういう感じです。
本当に社内公募で部署を移れるの?
上述したとおり私は現役の人事担当者なのですが、色々な人の話を聞くと本当に社内公募で異動できるかどうかは会社によってまちまちのようです。私の会社(外資系)は社内公募がめちゃくちゃ活用されているのですが、形骸化している会社も確かにあります。
このあたりはできれば入社前に調べておきたいポイントですね。
社内公募のメリット・デメリット
社内公募と転職を比べたとき、以下のようなメリット・デメリットがあります。
社内公募のメリットは、①転職せずとも今と違う仕事にチャレンジできる ②キャリアチェンジを成功させやすい ③その部署や上司の内情があらかじめわかる ④全然違う職種にチャレンジしやすいの4点です。それぞれ具体的に説明しましょう。
①転職せずとも今と違う仕事にチャレンジできる。転職は、特に短期で重ねすぎるとマーケットバリューを棄損します。そのリスクなくして違う仕事にチャレンジできるのは転職にはないメリット。
②キャリアチェンジを成功させやすい。転職と違って、社内公募による異動は
- 同じ社風
- 同じ制度
- 同じ業務プロセス
を持った会社の中での異動ですから、これらのミスマッチが発生しません。ありえるのは仕事内容のミスマッチと人間関係のミスマッチだけ。逆に言えば転職だとこれら全部変化するわけですからその分だけミスマッチのリスクが高まります。
③その部署や上司の内情があらかじめわかる。社内なので、その気なれば異動先の部署の内情を調べることができます。結果、パワハラ上司や陰湿な人間関係の職場等を避けやすいというメリットがあります。
④全然違う職種にチャレンジしやすい。一般的に全く経験のない職種へのキャリアチェンジは28歳あたりが上限です。なので20代のうちにあるていど、自分が専門とする職種を決める必要がある。一方で社内公募の場合は30代以降でも未経験職種にチャレンジできることがあります。
デメリット
社内公募のデメリットは①こちらの評判が異動先に伝わってしまうことがある ②自分の部下が社内公募に応募することを嫌がる上司もいる ③転職に比べると選択肢が少ないこともあるの3点です。こちらももう少し詳しくみてみましょう。
①こちらの評判が異動先に伝わってしまうことがある。上記メリットの③とは逆に、こちらの社内での評判も応募先に伝わってしまいます。社内で一度好ましくない評判・噂が立ってしまうと、異動先でもそれを引きずるはめになったり、あるいは応募時点でそういった評判を理由に不合格にされることがあります。
②自分の部下が社内公募に応募することを嫌がる上司もいる。残念ながら世の中には自分の管理している部署のメンバーが(たとえ社内であれ)出ていくことを良く思わない独占型の上司がいます。このばあい自分が社内公募に応募していることが上司に漏れてしまった時にその上司からの評価が下がってしまうリスクがあります。また世の中にはそもそも上司の了承を得ないと社内公募に応募できない制度になっている会社もあります。この場合このような独占型の上司のもとで働いている限り応募自体困難になるケースもあります。
③転職に比べると選択肢が少ないことも。当然ですが世の中のたくさんの会社の中から応募先を探せる転職にくらべて、社内公募の場合はその会社の手掛ける事業に関連した職種だけが選択肢です。ぜんぜん違う業界へのチャレンジなどはしづらいです。
社内公募は出世や年収アップにプラス?マイナス?
では社内公募への応募はいわゆる出世や年収アップという観点ではプラスに働くのでしょうか?
この問いを考える上で考えるべきは日本の終身雇用の崩壊と中途採用の拡大です。これについては以前下記の記事でも書きました。
トヨタにおける中途採用の拡大と、生え抜きアドバンテージの消失 - キャリアについてのよしなし
中途採用が拡大すると、社外からやってくる専門スキルを持った人材との熾烈な出世競争をすることになりますから、こちらもちゃんと専門スキルと市場価値=マーケットバリューをつけていかないと太刀打ちできません。
したがって社内公募への応募も純粋に
マーケットバリュー向上につながるかどうか
この一点から判断すべきです。マーケットバリュー向上につながるなら基本的に出世・年収アップにもプラスですし、そうじゃないならマイナスです。例外はありますが。
ではどうやってマーケットバリュー向上につながるかを判断するか。
以前(年収アップ戦略)でもお話ししたように、日本で普通に会社員をしていると多くの場合どこかで停滞期がやってきます。成長に必要なインプットがあまりないまま数年が経過してしまうのです。
こうなると基本的にマーケットバリューが上がりませんから、何らかの動きをすべきです。社内公募に応募したり転職したりすべきなのはまさにこういうタイミングです。
こういう停滞期に入っているなら社内公募で動く方がマーケットバリュー向上につながりやすいです。単純です。
これからは自律的なキャリアの時代
以下のエントリーでも書いたように、いままでの日本は会社が一人一人のキャリアのレールを敷いてあげる時代でした。しかしこれからは社内公募を通じて自分自身で能動的にキャリア形成していく必要があります。
「自分のキャリアは自分で決めたい!」という人にはやさしく、「会社になるべく乗っかりたい・・・」という人にはきびしい、そんな時代はもう目の前です。
もはやいつ会社から「もう長期雇用は保証できません」と言われてもおかしくないのですから、自律的なキャリア形成をはじめるのは早ければ早いほどよいです。
社内公募に応募し、自分のレジュメを書いてキャリアを棚卸しするのはその第一歩としては最適です。何より不合格になっても同じ職場にとどまればいいだけですから。
迷ったら応募してみましょう。そこでの経験はきっとプラスになります。
関連記事です。社内公募を通じたキャリア形成は肩書き・出世に興味ない派の人にとっても大事になってきます。