キャリアについてのよしなし

元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成のセオリーを解説します 毎週木曜を含む週1〜2回更新

自分の意思でキャリアを決めないといけない時代がくる、その理由

今日はちょっとしたコラムのような記事です。ちょっと今大きめの記事の準備をしてまして、今週は軽いネタです。


社内公募制度は将来日本でも一般化する

私は今後社内公募制度が日本で一般化すると考えています。そしてそれとともに自分の意思でキャリアを切り開いていなければならくなる時代がきます。

 

社内公募制度になじみのない方に説明すると、会社の中で欠員が発生した時、社内で広く募集をつのって、興味がある人が「転職の時のように」応募するという仕組みです。

普通に職歴書を提出しますし、面接も行われます。

 

外資だとほとんどの会社が導入しています。日本ではまだそれほど一般的ではないですですが、今後これが一般化するだろうと予測しています。

 

なんで今そんなに一般的じゃないかというと、日本では会社が一人一人の人事の決定権を持っているからです。


日本では会社が人事の決定権を持つ

日本では基本的に異動にまつわる人事権が会社側ににあります。

これは人事権を持つと同時に雇用保障しているからです。

 

日本では会社に終身雇用もしくは長期に渡る雇用保障が期待されています。ただしそのためにはその時々のニーズのあるところに(無理やりでも)異動させる必要があります。


つまり、

終身(長期)雇用 ⇔ 会社主導の人事異動

という強固な結びつきがあります。転勤がイヤだろうが希望と異なる仕事だろうがもう問答無用です。

 

この日本特有の人事慣行の由来については「若者と労働」という本が詳しく説明しているので興味があれば読んでみるといいかもです。

 

なんですが、最近は働き手の中に「もう少しキャリアに自分の意思を反映させたい」という希望が持ち上がってきていて、それに応えるべく「自己申告制度」を導入する会社が増えています。

 

これは「希望する進路を会社に申告する」という制度で、あくまでその申告内容を聞くかどうかの決定権はやはり会社にあります。

 

なので日本の企業はまだまだ人事権を手放していません。いないのですが、最近もトヨタのトップが「終身雇用もう限界」といった発言をしているくらいですから、終身雇用と対をなす会社主導人事もそろそろお迎えがきつつある感じがします。


海外では個人がキャリアの決定権を持つ

一方で多くの国では会社ではなく個人が決定権を持つ仕組みです。

 

個人主義の国、アメリカではその傾向が顕著ですね。彼の国では “Employment at will” といって、自分の意思で会社に勤め、自分の意思でキャリアも作っていくという意識が特に強いです(その代わり雇用保障もない)。

 

ちなみに外資の日本法人でもこのモデルを採用しているケースが多いです。厳密にはそのまま導入はしづらいのでローカライズしてやる感じです。

 

この場合、社内でのキャリア形成は社内公募を中心に展開されます。

 

社内公募の場合、会社側は応募自体を拒むことができません。これが自己申告制度との大きな違い。

 

応募は書類選考・面接を経て文字通り「採用」されるかどうかが決定されます。社内に公募をかけてからでないと社外募集できないと定められているケースも多いですね。

 

多くの外資ではジョブごとに細分化されていて定期的なジョブローテーションがないため、専門性をつけやすい反面、放っておくと何年も同じ仕事を続けることになりがちです。

 

これを回避するために社員に異なる職種にチャレンジするチャンスを提供するのが社内公募の役割です。

 

社員の側からすると、社内外両方の募集をみて「自分でしかけて」キャリアの幅を広げる必要があります。

 

アメリカで転職が多い理由の一つはこのあたりにもあります

 

社内公募の世界では、昇格も公募への応募を通じて勝ち取るもの(上からの任命もありますけどね)。なんていうか非常に個人主義的な競争社会なわけです。

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日本法人の海外現地法人での問題

さて問題が一つあって、海外現地法人の場合、日本的システムを現地に導入するか、現地に合わせた社内公募を導入するかの二択になります。

 

前者の場合、特にアメリカや中国といった地域は解雇規制がゆるいので、日本のような雇用保障がないのにキャリアに自由度がないことになり、悪いところどりになります。

なのでローカルの外国人スタッフから非常に評判が悪い。

 

一方で後者(現地モデルを採用)の場合、現地スタッフのキャリアパスが現地に留まりがち、要は現地スタッフが本社側で出世できないという問題があります。

 

どういうことかというと、現地法人でスペシャリストとしてぼちぼち出世しても肝心の本社がジョブローテを繰り返したジェネラリストを評価する仕組みになっているし、本社に社内公募もないので現地のスペシャリスをうまく活用できないわけです。

 

日本企業に応募する人の中には日本での就業に前向きなケースも少なくないのですが、自分で手をあげることができずお上の目に留まるのを待つだけになってしまいがち。

 

そんなこんなで今も昔も日本企業は海外で就職先としてあまり人気がありません。

 

今後は社内公募が増える

ところが近年では日本の国内市場が縮んできてますので中小を含む多数の日本企業が海外市場に打って出る必要に迫られている。

 

すると今後は日本企業の海外現地法人での採用競争力確保がより重要な課題になってきます。

 

その際に上記のような問題が足をひっぱることを考えると、「海外での採用競争力を確保するために」日本の本社と海外法人の人事制度を、アメリカ型に寄せつつ一本化する会社が増えてくるでしょう。

 

社内公募はアメリカ型人事制度の柱の一つなので、こうした流れの中で増えます。

 

というか既にこうなってきている例もあって、たとえば日立なんかは個人主導のキャリア形成を謳っています。

"ただ、日本人はまだ受け身のところがあります。ジョブ型は報酬がポジションに付いてくるので、自分からそのポジションを取りにいかないといけない。自分でキャリアをこうしたいと決めて必要なスキルを磨いて経験を積む必要があります。"

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00033/041800001/

 

そんなわけで自分のキャリアは自分で決めたいという人にはやさしく、会社に乗っかりたい人にはきびしい、そんな社内公募が一般化する時代はもう目の前という感じがします。

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