キャリアについてのよしなし

MBAで元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成の戦略と定石を解説します 現在は不定期更新

(プロが教える年収アップ戦略③)東京で消耗する価値とは?

 年収アップ戦略の3回目です。各回の記事はこちら↓

前々回、
しくみ・構造に乗ることで、年収上がり幅÷投下労力を最大化することが大事であることと、
前回この考え方をつかってある程度自動的に年収を上げていく方法、「レント上げ潮戦略」について書きました。

 

さてこういう「勝手に年収が上がる方法」はもう一つあります。これと「レント上げ潮戦略」を組み合わせることでだいたい普通に働いていれば結構良い水準に持っていくことができます。

 

前回のおさらい

まずは前回のおさらいですが、年収アップ戦略のベースには年収にまつわる2つの仕組みがあります。

 

1 同じマーケット内では、個々の年収は平準化する
2 一人一人の年収は「給与原資の解明×分配方法」で決まる

 

この2つを組み合わせて、

①給与原資を大きくとれる業界の人がたくさんいそうなマーケットに身をおく
②そうすると年収の高い人たちと転職市場で競合するので、
③何度か転職するだけで平準化の圧力のおかげで勝手に年収があがる

というのが前回紹介した「上げ潮戦略」でした。

詳しくはエントリー自体を読んで頂けると幸いなのですが、とにかく現代は企業が普通以上に上げている利益=超過利潤(レント)が大きな時代です。 

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したがってそのレントの中心、つまりGAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)に代表されるハイテク企業や製薬業界に入ったり、こうした企業群へのサービスプロバイダーになることで高年収の人たちと競合できるようになります。すると結果的に普通以上に年収があがります。

 

これが私が転職エージェント&採用マネージャーとして何千人もの転職を見てきて見出した年収についてのひとつのセオリーです。

 

レント(超過利潤)が向こうから近づいてくる方法は?

さてレント(超過利潤)に近づくことで年収をあげられるなら、逆にレントの多い企業の方からこっちに近づいてくるようになれば、放っておいても勝手に年収が上がることなります。そのための方法が今回紹介する2つ目の戦略、都市の引力活用戦略です。

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前回お話ししたように、レントに乗っかって年収を上げるには、そのレントを生んでいる業界が成長している必要があります。成長していればその業界からたくさん求人がでるため、業界に入ったりサービスプロバイダーとして近づきやすくなるためです。その意味でいま狙い目なのはソフトウェアと製薬業界です。

 

さてこれらの業界はいずれもイノベーションが重要な業界ですが、こうした業界には一つの特徴があります。

 

カリフォルニア大学バークレー校の経済学者エンリコ・モレッティの研究によると、イノベーション系企業は互いに集まってくる傾向があるのです。

 

ということは、すでにイノベーション系企業が多数ある土地に住んでいれば、イノベーション系の企業が向こうからやってきます。たっぷりのレントと、それによる高年収人材たちをひきつれて。

 

なぜ企業が集まってくるのか

これはなんで起きるのかというと、都市の集積効果と呼ばれるものが影響するからです。

 

モレッティによるとイノベーション産業の会社が成長するには、オフィスや研究所の立地が
1. 採用しやすい(スキルのある人材がいる)
2. 資金調達しやすい(ベンチャーキャピタルなどの金融機関がある)
3. いろんなサービス業者を見つけやすい(弁護士とかコンサルとか物流・配送業者とかがいる)
みたいな点を見たしていることが大事になります。

 

なのでイノベーション型の企業はこういう条件を備えた都市に集まってきます。

 

すると新しくやってきた企業を目当てに、今度は働き手やベンチャーキャピタル、サービス業者などが集まってきます。すると上の3つの要素がさらに高まります。

 

図にするとこういう感じです。

 

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この循環で都市が大きくなることをここで都市の引力と呼びます。

 

都市の引力を活用して上げ潮に乗る(都市の引力活用戦略)

さて年収アップ戦力に話を戻します。

 

年収アップのためにはこういう引力の強いところ=レントの大きな会社が多い土地に身を移せばよいです。

 

するとGAFAみたいな企業があっちからやってきます。
そうすると高年収の人たちと転職市場でバッティングする機会が増えます。
これで平準化圧力によって年収が上がります。

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これが2つ目の戦略、都市の引力活用戦略です。基本的にはレント上げ潮戦略と同じで、業界・ビジネス軸で近づくか、物理的に近づくかという違いがあるだけです。

 

モレッティは「給料は技能より『どこに住んでいるか』で決まる」としています。彼の研究によると、アメリカでは働き手の数が100万人以上の土地で働いている人の平均賃金は、25万人未満の土地の約1.3倍あります。しかもこれは双方の年齢や職種の違いなどによる影響を差し引いても変わらないとのこと。

 

また地方・田舎在住派にはあまり良くないニュースですが、都市部への集積は世界的なトレンドでもあります。たとえば、マッキンゼー・グローバル・インスティチュートは今後世界中の新興国でも都市への人口集積が進むと予想しています。

 

そんなこんなで、私は以前から28歳までに住む場所を決めよう!というふうに話しています。

 

具体的にどんな都市を選ぶべきか

では具体的にはどんな都市を選ぶべきでしょうか?

 

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究極的にはほぼ東京一択、ついで近畿圏と名古屋・中京エリアというつまらない結論になってしまうのですが、ほかにも札幌・仙台・広島・福岡などの各地域の中核都市もある程度候補になるでしょう。

 

特に名古屋についていえば、自動車が「車輪のついたコンピューター」なんで言われつつあるほどに車載ソフトウェアの重要性が高まっていることから今後も有望なんじゃないかと思います。

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もう一つ大事なのは新しいイノベーションハブの動向に目をこらすことです。たとえば博多は2014年に国家戦略特区に指定されていらい、起業しやすい環境になってきています。

また博多は人口動態も良いです。以下の画像は福岡市の運営するサイトからの引用ですが、若い人がこれだけ多いと企業側にとって魅力があります。

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また福岡の会津若松市はスマートシティ構想というのをやっていて、その一環で今年からアクセンチュアやNECがここの真新しいオフィス棟に入居しています。

 

www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp


こういう取り組みに注目しておくと、意外と自分の住んでいるところの近くでもちょっとした上げ潮を捉えられるかもしれません。


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