- 給料を上げたいと思うなら、まずは一にも二にも住む場所を変えること
- そしてそれはソフトウェアなどのイノベーション型産業が集積している場所、日本ならズバリ圧倒的に東京
ということを書きました。
今回はその補足みたいな話です。
前回書いたようにソフトウェアなどのイノベーション産業のオフィスは集積する傾向があります。日本だとほとんど東京一択です。
(余談ですがこの傾向はものづくりの会社では比較的弱いです。今も工場は地価の安い地方の郊外にあることが多いことからもそれはわかると思います。ものづくりの場合、大きなスペースが必要だし装置に人をはり付けないといけないからです)
一方で予定通りなら2027年にリニアも開業しますし、今はバーチャルなコミュニケーションツールも発達しています。そんな中、個人、つまりソフトウェアのエンジニアやプログラマは本当に東京に住むべきでしょうか?
結論から書くと、やはり単純にキャリアだけを考えるなら東京に住むべきです。これも前回と同じで、東京がベストだし、それがNGなら他の中核的な大都市に住むべきです。
プログラマーがわざわざ東京に住むメリット
イノベーション産業の技術者がわざわざ物価の高い東京に住むメリット、これは一にも二にも人的資本の外部性という言葉に集約されます。
人的資本の外部性とは何かというと、要するに
進学校にいると周りが勉強するからそれに刺激されて勉強するようになったり、刺激を受けて自分も知的関心が高まる(その結果経済的な恩恵を得られる)
みたいな、環境が人に影響する力のことです。
イノベーション職種というのは知識職なので、こういう知的刺激・知的関心を得られるかどうかが将来の市場価値にもろに影響します。
なのでイノベーション職種の人はたとえば
- 凄い技術者との"リアルな"出会いや交流がある
- 先端技術に関する勉強会やセミナーに参加しやすい
といったチャンスを得られるという、それだけの理由で都市部にいるべき理由になります。
なぜ対面が大事なのか?
今どきセミナーや勉強会なんて内容を聞くだけならWebセミナーでも十分機能しますが、それでもわざわざ「生」を求めて足を運ぶ人がたくさんいるのは、結局人間はライブが好きなのと、Web上のやりとりだけでは十分に仲良くなれないと考える人が多いからです。
MITのトーマス・アレン氏は、研究開発施設のエンジニアを対象とした研究で、23メートル以上離れた場所に座っている人々とはほとんど相互作用しあうことはないことを発見したそうです(*1)
こういう、周囲の環境が自分に与える影響について経験的に知っている人は物価が高くても人的資本の外部性の強い場所を選びます。
トロント大学のリチャード・フロリダ氏は自身の論文で、起業家を含むいわゆる「タレント(専門人材)」は専門分野の最先端の情報を得るために生活コストが高くても一定の地域に集中することを統計的に示したそうです。(*2)
そんなわけで、最先端技術を持つ大企業、ベンチャー、研究機関、大学などがあるところに住むこと、これ自体がマーケットバリューを高める方向に働きます。
地方派はどうすべきか
地方でも最大限マーケットバリューを高め年収を上げていこうとすると、、ある程度長期的な戦略が必要です。これはいずれ別のエントリーで書きたいと思います。
注釈
(*1)リチャード・フロリダ著「新・クリエイティブ資本論」参照
(*2)入山章栄著「世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア」第11章参照