前回は市場価値を高めるための基本的な指針として
【専門領域に特化する方向性】と
【専門領域を拡張していく方向性】、
この2つを最適化しましょう
という話をしました。
今回は前者、特化をどうやってしていけばいいか?を詳しく見ていきます。
市場価値には分かりやすさが必要というはなし
さて人材市場価値(マーケットバリュー)は社外の雇用市場に身をおいた時につけられる評価、外からの評価です。この社外評価と社内での評価の違いは何でしょうか?
それは成果(アウトプット)をあげるまでのプロセスが見えるかどうかです。社外評価では書類選考とか面接とかを通じてその人がどれだけ成果をあげられそうかを推しはかることしかできません。
だから高い社外評価を得るためには分かりやすさが必要です。もっというとレジュメ(職務経歴書)に何が書けるか・面接で何を言えるか、です。客観的に能力を伝えられる必要があります。
今やっていることをリピートするだけではレジュメに書けるネタは増えません。そしてレジュメに厚みが出ないと市場価値は高まりません。
これは例えば一生転職せずいまの会社で働く覚悟があるとか、今はプライベートを優先したいとか割り切ってるなら問題ありません。それも一つの価値観です。
逆に市場価値を高めたいという気持ちがあるのにレジュメに書けることが増えないまま年月を重ねるのは問題です。この場合は現状を変える必要があるということです。
定量のモノサシと定性のモノサシ、何によって社外評価が測られるか
さて客観性を担保するにあたっては職種ごとに異なる戦略が必要になります。なぜなら職種によって社外評価のモノサシが異なるからです。
ホワイトカラーの仕事はだいたい下記4つに分類できます。
この中で、顧客に近く売上という指標のあるフロントオフィスの仕事は定量的に能力を証明できる仕事の比重が大きくなります。
逆にバックオフィスは定性的にしか能力を表現できない仕事の比重が大きくなります。
- フロントオフィス職種(営業・販売など顧客と直接接する仕事)
- ミドルオフィス職種(マーケ・ロジなど顧客と直接接しないが、企業の競争力を左右する仕事)
- バックオフィス職種(経理・人事など、企業の競争力を大きく左右しない仕事)
- イノベーション関連の職種(R&D、デザイナーなどビジネス・製品のアイデアを作る仕事)→ここはちょっと特殊なので後日別途解説します
(この4つの分類については下記エントリーを参照のこと
キャリアについて20代のうちに決めるべき、たった2つのこと)
もしフロントの営業職で、社内で年間MVP表彰を何度も取ったような圧倒的な実績がある人であれば、同じ業界の会社はどこも欲しがります。マーケット・顧客に近いほど、数字がそのままその人の能力のモノサシになるからです。なので数字≒市場価値です。
一方で経理とか秘書とかのバックオフィスであればより定性的な情報の重要度が高くなります(定量情報が無意味というわけではないですが)。たとえば経理であれば、
- 年次決算を主担当として締めたことがあるか
- 資金調達などの財務関連の経験があるか
- SAPなどのERPの導入経験があるか
といった具合です。
ただし、こちらは定性的な分だけ客観的な能力証明がしづらいです。数字ほどの説得力がないから、説得力には欠けます。なので普通に年月を重ねると他の大多数と同じようなレジュメに見えてしまい、埋没します。ということで一工夫が必要になるわけです
このあたりの話については以下の記事でより詳しい解説をしました。
ここまでの話を踏まえて以下で市場価値を高めるための2通りの戦略をご紹介しましょう。
数字で戦える人の戦略、それは王道
パフォーマンスが数字で客観的に測定でき、かつ他者を圧倒する実績をあげられる(=数字で戦える)場合、市場価値向上に余計なことは必要ありません。スキルを磨き上げ、より高い数字を出しつづければそれが価値になります。
こういう人は下手な小細工に走らず、その方向性で頑張るのが一番です。たとえば資格とかたくさん持ってるけど売れない営業と、資格も学歴もないけど誰よりも売る営業だったらそれは後者の方が勝ちます。王道とも言えます。
一方で王道はある意味「普通に」会社が社員に求めていることなのですから、多くの人はその要望に応えようと多かれ少なかれ努力するわけです。このパターンで商品価値を高めようとすると血みどろの競争に巻き込まれます。だからこそ勝った時の見返りも大きいわけです。
数字で戦えない人の戦略、それは差別化
パフォーマンスが数字で測定しづらい場合、あるいは数字で測定できるものの平凡な実績しか残せない場合は、差別化に頼ることになります。
他の多くの人があまり持っていないスキル・経験・知識を取り込むことで、他の大勢との違いを出すということです。企業には毎日たくさんのレジュメが送られてきますので、その中で埋没しないためには分かりやすい違いが必要です。
これは王道から外れる、つまり会社の要望から意図的にズレにいくということでもあります。このためには社内公募などを活用してもいいし、業務外で自己投資してもよいです。やり方は色々あります。
関連エントリー:
自身の土俵でどうすれば差別化できるかはぜひご自身でも考えて頂きたいのですが、ここでは2つほど例を挙げたいと思います。
①その業界の人たちが苦手だったり好きじゃなさそうな分野のスキルをつける
前に書いた「売る場所を変える」という戦略では自分が持っている経験やスキルがレアな価値を場所を見極めてそこに身を移そう、という話をしました。
これはその応用で、あとからレアなスキルを身につけるということです。
色々なパターンが考えられますが、
文系比率が高い職種×理系に多いスキル(例 IT系スキル)
理系比率が高い職種×文系に多いスキル(例 英語)
という文理をまたぐパターンはやはり有効なことが多いです。たとえばこんな組み合わせがあります。
- セキュリティエンジニア(理系)×関連法の詳細な知識(文系)
- 証券アナリスト×プログラミングスキル
- 人事制度設計×統計スキル
- 生産技術エンジニア×英語
別に文理またぎのパターンでなくとも、供給不足のスキルは世の中大量にあります。ちょっとアンテナをはって1カ月も新聞に目を通していれば何となく見えてきます。
②参入障壁高めなスキルを身につける
狙い目は独学だと身につけるのが難しいスキル・資格です。たとえば単純に資格試験の難易度が高かったり、一定時間の講習が必須となる資格を取得するなど。
こういう資格は最初に自腹を切る必要が出てくるため、その分手を出す人が減ります。スキル・資格にどれだけ参入障壁があるかを意識しておくと良いでしょう。
注意が必要なのは、差別化した能力が必ずしも現職で評価されたり活用されたりするとは限らないということです。
たとえば機械部品の営業職で英語ができる人。この人はジョブマーケット全体としてはかなり需要がありますが、もし今いる会社が国際的な商流を持っていないならしばらくは宝の持ち腐れになる可能性があります。
こうした「休眠スキル」を生かすためにはしばしば転職が必要になります。
ということで次回は拡張していく方法論について書きたいと思います。