キャリアについてのよしなし

元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成のセオリーを解説します 毎週木曜を含む週1〜2回更新

リクナビショックと人材紹介の介在価値(時事ネタ)

いわゆるリクナビショック、
つまりリクルートが学生の内定辞退の可能性を予測したデータを企業に販売していた問題が、中途採用にも飛び火しているようです。元エージェントとして少し考察したいと思います。

 

リクナビの場合、リクルートが顧客企業に応募者(学生)の内定辞退可能性のデータを販売していたことが問題になりました。

 

中途採用ビジネスでも、いわゆる求人広告の界隈では内定辞退率を企業側に教えるなんていう話はまだ聞いたことないですが、人材紹介(転職エージェント)の方ではそれに近いことが普通に行われていて、それは果たしてアリなの?というのが今回の論点です。

"また、そもそも人材紹介という側面でも、「企業に人材を紹介するとき、『この応募者は最終選考に進んでいる会社が2社あるから、早く内定を出したほうがいい』と伝えることはよくあること。内定辞退の可能性をデータで伝えるのが違法であれば、直に聞かれて答えるのはよいのだろうか」(元キャリアコンサルタント)と現場は困惑している。"
ダイヤンドオンラインより引用 https://diamond.jp/articles/-/215038?page=3


これ見てもわかるんですが、企業と応募者のあいだに立つ業者が、企業側に応募者の(辞退可能性を含めた)状況を伝える行為は双方にメリットがあるときもあります。


というかもっというと人材紹介の意義の大きな部分って、求人媒体なんかの1:1での採用―求職活動ではこぼれ落ちてしまうマッチングを、両者の仲立ちをすることでマッチさせられるところにあると思うんですね。それがないとただのスカウト屋さんになってしまう。

 

以前にも書きましたが、こういう情報をうまくコントロールしてマッチ率を上げられるという人材紹介のアドバンテージは、特に応募できる求人が少ない求職者にとってはとてもありがたいものです。

"グリップというのは一部の人材紹介会社界隈でのちょっとした業界用語で、エージェントがひとつひとつの募集案件の状況把握やコントロールをどれだけできてるかを指します。たとえば、

  • 企業側が他にどれくらい候補者を抱えているか?
  • 各候補者のその時点での優先順位や進行度
  • 企業側が思い描いている全体的なスケジュール
  • 企業にとってどれくらい急募か?どれくらい妥協できる採用なのか?
  • どういう面接をする傾向があるか?具体的な質問内容は?

といった情報を握って(Grip)、そのエージェントの担当する人材に有利になるようネゴする能力ですね。"

応募可能な求人が少ない場合に選ぶべきエージェントとは - キャリアについてのよしなし

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そんなわけで私は今後エージェントがこういう情報コントロールを一切すべきでないとも、できなくなるとも思いません。

 

ただ人材紹介の場合問題になりがちなのは、
【候補者が「ここまでは企業に伝えてもらってもいいと思ってるゾーン」】

【エージェントが実際に企業に話しちゃうゾーン】
が微妙にズレてて、要は企業側にしゃべりすぎちゃうケースがある点です。

 

私も転職活動しているときに「これはエージェント相手だから話しているのに…」という内容を応募先企業の人事担当が知ってて嫌な気分になったことがありました。

 

今は個人情報について猫も杓子もセンシティブになっている時代ですから、人材紹介側もそういうセンシティブさを身に着けて、「どこまで話していい?」というのを候補者としっかり握っておく必要があります。ここは今までこの業界でやや欠けてた視点ではないかと。

 

企業としても、そういった個人情報系のトラブルを避けつつマッチング可能性を最大化できる、繊細なコミュニケーションスキルこそ紹介手数料を払う価値を感じる部分です。これができないエージェントは今後選ばれなくなってくるんじゃないでしょうか。

 

一方で求職者の側からいえば、そうはいっても口の軽いエージェントはいるでしょうから不安ならエージェント相手でも細かいことは話さない、という自衛策が必要かもしれませんね。

 

いずれにせよ人材紹介業界というのは2000年代の中頃から急激に拡大してきた中で、組織的な成熟度を高めるのを後回しにしてきた面が少なからずあるように思います。

 

今回の件もこの業界がより広い社会的なインフラとして発展していく上でひとつのきっかけになるかもしれないですね。

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