少し前から世界の景気、そして転職マーケットに変調の兆しが出てきていますね。
アメリカの経済のファンダメンタルは今のところ好調ですが、一方でサウジの石油施設への攻撃を受けて原油価格が上昇するなど、新たなリスク要因も出てきています。
今朝の日経新聞にありましたが、日経が定期的にやっている「社長100人アンケート」で世界景気の現状を「悪化している」と回答した割合が41.3%となり(「穏やかに悪化」を含む)、久しぶりに「拡大している」を逆転したようです。
これ2018年3月時点で「悪化」はほとんどゼロでしたので、この1年ちょっとの間に、経営者が急激に世界景気の変調を認識しはじめているということになります。
では実際いつまで転職マーケットは今の好調を維持するのでしょうか?
来年上半期に転換期がくる?
これは私がいつも強調する点なんですが、転職マーケットは景気の実態よりも経営者の心理状態に左右されます。
大企業(関連会社含む)に雇用されているのはだいたい4分の1、残りの大きな割合をは中小企業が占めます。少なからぬ中小企業社長は精緻な景気予測よりも自身の気分やカンで採用を決めますので、こういう「世のムード」が彼らの人材投資の判断に大きく影響するわけです。
そういう意味では一般消費者の消費行動と同じような側面があると言えるでしょう。ただし実際に採用計画に影響が出るのは、
世のムードが経営者心理に影響
⬇︎
人員計画策定に影響
⬇︎
採用計画策定に影響
といった具合にタイムラグがあります。これがだいたい半年くらい。
ちょうど半年後には日本企業の新年度が始まりますので、今のムードが継続した場合、早ければそのあたりからマーケットが変調をきたすかもしれません。一方でムードということでいえば「オリンピックまでは楽観ムード」なんて声も聞かれます。
いずれにせよ来年上半期が一つの転換点になる可能性はそれなりにありそうです。
転職活動のタイミング
まあこういう細かい経済予測は基本的にあまり当たらないことが知られています。あまり怪しげな不況の到来予測に右往左往して駆け込み転職するより、基本的なマーケットバリュー向上に注力した方が結果的に良い転職につながります。
ちなみにリーマンショックの時は、リーマンブラザーズの破綻が2008年9月、その後の日本の有効求人倍率の底が2019年の6〜7月あたりです。外資の求人はあっという間に総崩れになりましたが、日系企業の求人はリーマンショック発生から3〜4ヶ月は結構マーケットに残っていたのです。
従って次回何かがきっかけで不景気が到来したとしても、そこからすぐ動けば転職には間に合います。
大事なのは2点です。
一つは明確な歴史の転換点みたいなものだけは見逃さないようにすること。
もう一つは普段から動こうと思った時に動けるよう準備しておくこと。履歴書・職歴書くらいは早めに準備しておいた方がいいでしょう。
外資系の動向は・・・
一応私も外資系勤務のはしくれなので少し外資の展望を補足しておきます。
私がマーケット観測でいつも参照するのはJACリクルートメントのIRページです。同社は外資系に強く、また上場していて定期的に人材紹介事業のみを切り取ったデータを提供しているので非常に参考になります。
さてそのJACの直近の人材紹介事業の動きですが、最新のレポート(https://ssl4.eir-parts.net/doc/2124/tdnet/1674343/00.pdf)では、2019年5月・6月も昨年対比15.2%、9.2%という売上の伸びがみられます。
全然調子いいじゃん、といいたくなるところですが、ここはそれまでずっと半年くらい毎月20%〜40%くらいの伸びを叩き出していたので(それ自体すごいですけど)、それを考えると多少キナ臭い感じがしなくもないです。
ただし、私が付き合いのあるいくつかのエージェントから、「5〜6月に景気動向を見極めるべく採用凍結になっている外資が多かった。7月以降は採用数も持ち直している」といったコメントも聞きました。
外資は短期的な人員数(ヘッドカウント)の管理がきつい会社が多いですから、JACの直近の数字もそれに引きずられただけかもしれません。まぁむこう数ヶ月は大丈夫かもしれないですね。
(10月7日追記:アメリカの経済ファンダメンタルの落ち込みを受けて米株がどんと下がりましたね。転職マーケットを取り巻く環境はますます不安定化しているように見えます)