さて今回は「サイズ感の大きく変わる転職は意外と難しい」という話をします。
たとえば企業の従業員数のケタがひとつ変わる、そんなイメージですが、エージェントとして企業の採用担当ときて、数多くの転職を見てきた中で分かった、典型的な失敗パターンをご紹介します。
実は「小さい企業から大企業へ移る場合」、「大きい企業から小さい企業へ移る場合」、それぞれで異なる落とし穴があります。
それらをあらかじめ知っておくと失敗転職を回避しやすくなります。まず今回は小→大のパターンについて解説しましょう。
※大→小のパターンについてはこちら
難しさ1-組織の複雑さ
小から大への転職の難しさ、それは組織の複雑さに起因します。
大企業は通常高度に分業されており、それぞれが狭い範囲の役割を持って機能しています。
一方で小規模なベンチャーであれば、たとえば人事専任の担当者はいても一人なので、採用・研修・制度・給与といった全人事業務を一人で担当します。
これが規模が大きくなってくると、各領域それぞれ別の人間が担当するようになるわけです。
当然こういう風にすると各領域ごとに専門性が高まり、それにより生産性が高まり、結果的に待遇も良くなる、というメリットを享受できます。基本的に企業規模と待遇は相関します。(例外はありますが)
ただしここで問題なのは、そうやって分業を進めていくと、その分各領域と領域のあいだで横の連携をたくさんとらないと機能しなくなります。
つまりこの図の⇔の部分です。
横の連携、というとピンときづらいかもしれませんが、要は報告・情報共有・事前連絡、あるいは根回しということです。
小企業であれば自己完結する業務が、大企業だと完結しない。これは言い換えればその分たくさんコミュニケーションをとらないといけなくなるということです。
これは小規模な組織になれているとシンプルにちょっとかったるいですし、 またある種の組織的なスキルを必要とします。これ苦手な人は本当に苦手です。
難しさ2-大企業に必要なコミュニケーションのお作法
また会社のサイズが上がると組織のヒエラルキーがより明確に、より大規模になります。すると他部署へのコミュニケーションをするさい、そこの部署の偉い人から順を追ってアプローチしないといけなくなる。
しかもこうしたアプローチ、コミュニケーションの仕方には会社それぞれにお作法があって中途入社者には分かりづらかったりします。
典型的なのが一時話題になった日立のメールの例でしょう。
こういうお作法って意外と会社によってバラバラなんですね。こういう問題は小さい会社より大きい会社でより顕在化しやすい。
難しさ3-インフラへの慣れ
もう一つはの落とし穴は、大企業特有の、高度で金のかかったインフラへの慣れという問題です。
大企業にいる人だと想像つかないかもしれないですが、世の中には受発注全部エクセルでやってる会社がたくさんあります。
私も何人も見てきましたが、こういう会社で慣れた人は複雑なERPソフトの入っている会社でお登りさんになったような気分になってしまうことがあります。
ある種のコンプレックスを抱えてしまうんですね。
実は受発注エクセルでやっている人なんかは逆に高度な関数やマクロを組めたりとインフラにお金をかけられない会社だからこそ様々なスキルと身に着けていることもあるのですが、問題は同じ職種で転職したはずなのにそのスキルが必要とされなかったりすることです。
こういうのは意外と不安な転職者の心理を圧迫するものなのです。
小規模企業でも例外もある
余談ですが、小規模企業でも例外的に大企業グループの小規模な子会社や、外資系企業の小規模な日本法人オフィスなんかだと、働き方は大企業的だったりします。
企業グループ子会社や外資の日本法人それ自体はベンチャー並みのサイズ感でも、全体では大きいため子会社ごと・国ごとをまたいだ分業化がなされていて横の連携が発生するわけです。またグループ・グローバルで統一されたシステムを入れていたりするので、意外とSAPが入ってたりします。
逆にいえばこういう環境で慣れた人であれば意外と大企業に行ってもスッと入れたりするものです。
結局は慣れでしかない
色々と書いてきましたが、どちらのパターンも結局慣れで解決できる問題でしかありません。
こういった落とし穴は比較的若く柔軟性が高い時期であれば乗り越えやすいのも確かでしょう。