前回の続きです。今回はそれなりに発生するであろう、大企業から中小・スタートアップへの転職でありがちな落とし穴について解説します。特にベンチャーっぽい立ち上げ・成長期の会社に興味のある方に見てもらえると幸いです。
このパターンは大企業ならではの歯車感や、下積み期間の成長の遅さ、将来がなんとなく見えてしまって変化を起こしたくなった時などに選択する人が多いと思います。
今は変化が激しく大企業といえど安定とは言えない時代ですが、そうした中で能動的に変化を起こしにいくキャリア選択といえると思います。
個人的には結構応援したい選択なのですが、だからこそどういう失敗が多いのかを事前に知っておくべきでしょう。
スタートアップ・ベンチャーの転職時にいちばん面食らうのは?
大企業からスタートアップ・ベンチャーに来た時に一番面食らうのは何でしょうか。こういう質問をすると返ってくる答えで多いのが、
「誰も手取り足取り教えてくれないから自分で積極的に動くことでしょう。その点は覚悟していますし、自分は大企業にいた時からもそういう風に積極的に動いてきた自負があるので大丈夫です」
というものです。最近は起業家が起業時のエピソードを描いた本なんかもたくさんでているのでこういう面はイメージしやすいですね。
しかし実はスタートアップ・ベンチャーに行って一番面食らうのはそこではありません。
「ちゃんとしていなさ」に耐える
実は多くの人が一番面食らうのはベンチャーならではの、「ちゃんとしてなさ」「曖昧さ」です。
どういうことかというと、大企業は大企業になるまでに、企業として色々な意味で"ちゃんとする"フェーズを通過してきています。(一般に大企業が一人当たり高収益になるのはそういった活動の産物という面もあります)
一方、まだ規模感の小さい会社の場合、業務は標準化されていなくひどく属人的です。
また各領域ごとに分業しきるほどの人的余裕がないので、半分素人が無理矢理カバーしている領域がたくさんあります。
大企業でなれた人がスタートアップに行く場合、こういうちゃんとしてなさに耐える必要があるのです。
コンプラ面のあやしさ
また立ち上げ期の会社だと、経理・財務面などに法律・コンプラ的にグレーっぽいゾーンがたくさんあります。
当然致命的なコンプラ違反があれば(自分を守る意味でも)居続けるべきではないのですが、ベンチャー・スタートアップで働くとなるとどうしてもこの「微妙にグレーなゾーン」と一定付き合っていかざるを得ない面があるのです。
しかし微妙な問題が山積している時に、特に性格的にキチっとしているタイプ、正義感が強かったり「〇〇はこうあるべき」というような思いが強いタイプの方はどうにも耐え難いと感じてしまいやすいんですね。
転職者の心理へ及ぼす影響
素人がカバーしている領域がたくさんあることの影響は他にも出ます。
通常ベンチャー・スタートアップというのは何か特別に秀でた強みがあって、その強みが牽引する形で成長していきます。
逆に強みでない部分に関しては素人が適当に回していることが多く、単純に業務のレベルが低かったりするんですね。要は会社としてのステータスがいびつなのです。
もともそのベンチャーのユニークな技術やビジネスモデルに惹かれて入社したはずが、そうした弱い部分を見るにつけ自分が突然レベルのひくい集団に紛れ込んでしまったような錯覚に陥ってしまう。
特に自分のテリトリー外で自ら改善しにいくのが難しい場合、どうしてもストレスを感じやすいものです。
持つべき心持ち
ではどうすれば良いのかというと、まぁ単純にベンチャーはちゃんとしてないものだと割り切ることです(笑)。
逆にそういった割り切りができないと、立ち上げ期の会社で働くのが辛くなります。これはもう性格の問題なので自分の性格を冷静に見つめなおして判断しましょう。
その上で、企業サイズの拡大とともにコンプラ的グレーゾーンは小さくなっていかないといけないので、そういう意識を持っている経営者かどうかは予め入社前に確認しておくことです。
具体的には事業計画の中にインフラや組織基盤、会計の整備といったことが織り込まれているか、そこに嘘くささがないかを確認しましょう。
バランスのとれた経営者であれば現状の歪さにも意識が向いているものです。
賃金水準の低下に対応する
あと、このエントリーのメインの主張とはずれるのですが、基本的に企業規模を下げると年収も下がることが多いです。(ただしイノベーション職種は例外的に年収があがることが結構あります)
従って年収ダウンに対して上手に対処する必要があることが多いです。
これについては別のエントリーで書いていきたいと思います。