今回は
(プロが教える年収アップ戦略④)未来のマーケットバリューに継続投資し、好況時に回収する
に関連して、「どうやって個人として不況をやり過ごすか」という戦略について解説します。
上記記事で書いたように、自己投資の成否は投資回収のタイミングに左右されます。
ところが、多くの人にとっての人生最大の投資回収イベントである就職は、そのタイミングを選びづらいという問題があります。せっかく十数年かけて教育投資してきたのに、就職活動のタイミングに不況がぶつかると良い就職先を見つけられないわけです。
また転職も同様で、不況による整理解雇、あるいは今は景気悪いのでできれば辞めたくないんだけど上司のパワハラがひどすぎてどうにも耐えがたい…みたいなときは景気が上向くのを待ってられません。
こういう、不況・不景気にどう対処するかが今回のテーマです。
不況・不景気はどれくらいの期間影響するのか
さてまず不況・不景気での就職がどれくらい年収に悪影響をもたらすかを見ておきましょう。「When 完璧なタイミングを科学する」(ダニエル•ピンク著)という本にアメリカでのケースが書いてあります。
「彼女は大きな発見をした。この男性たちのキャリアが始まった時期が、彼らの就職先やその後の経済状況を容赦なく決定したことがわかったのだ。不景気のときに労働市場に加わった者は、好景気のときに加わった者よりも、キャリアをスタートさせた当初、収入が少なかった。これはさほど驚くようなことではない。だが、スター卜当初の不利な立場はその後も変わらず、それから20年間も続いたのである。(中略)とくに活況を呈していた時期に卒業した場合と、とくに低迷をきわめていた時期に卒業した場合では、給与の差が20パーセント開くこともあった――これは卒業直後ではなく、彼らが30代後半になったときの格差である。好況時ではなく不況時の卒業により生じる総損失額は、インフレ率を調整すると、平均でおよそ10万ドルだった。タイミングがすべてではなかったが、総収入で6ケタの差を生み出していた。」
When 完璧なタイミングを科学する (赤文字は私)
なんと20年なので、新卒が40代に突入するまでの長期にわたり不利な立場に置かれます。エグい。
そう考えると、まず基本的な方向性として
「なるべく景気の良い時期に就職・転職し、景気の悪い時期は今の学校・会社でやりすごす」
ということを考える必要があります。
よく不景気になると大学院への進学が増えるといいますが、それは(それで不況を回避できる限りは)正しい行動なのです。
就活生の場合-回避しつつマーケットバリュー向上を狙う
ということで、財政的な余裕があれば進学・留学で時間を稼ぐことを検討しましょう。
下のグラフは2009年のリーマンショック前後の有効求人倍率ですが、これを見るとリーマンショックのピークが2009年で、そこから3年も経つと状況がかなり緩和されているのがわかります。
ただし平成の就職氷河期のように10年以上ダラダラ不景気が続くと逃げ道がないのも事実です。とは言え100年に一度の世界的な不況と言われたリーマンでも3年経つとマシになる、というのは一つの教訓と言えるでしょう。
なので就職のことだけ考えたアドバイスになりますが、
もし自分が大学1〜2年生で、不況ゆえに先輩方が就活に苦労しているなら
迷わずサークルも習い事もやめてひたすらバイトに打ち込み、大学3年で1年休学してニュージーランドあたりに留学
するというのが有効です。あるいは両親に土下座してお金を出してもらいましょう。
安くあげたいならタイとかのアジア方面でもいいです。
単なる留年でも時間稼ぎにはなりますが、どうしても就活時の心象は若干悪くなりますし、1年先に伸ばしたくらいではまだあまり状況が良くなっていない可能性があります。
そのためにも1年をできれば有効活用して少し難易度の高い資格を取るとか、就活市場での武器を手にいれましょう。最低でも「何かやってました感」を出すのがポイントです。いわばモラトリアムのお化粧です。
うまくいけば肘を怪我した野球のピッチャーが、移植手術後の長いリハビリ期間に筋トレしまくることで復帰後に球速アップするのに似て、かえって将来的な年収アップを見込めるかもしれません。
不況を逆手にとってマーケットバリューを高める気概を持てさえすれば景気のディスアドバンテージを克服する可能性が出てきます。
社会人の場合-有効求人倍率を見て動く
社会人であれば転職タイミングは多少ならコントロールできます。なので上記のように留学したりするのもいいですが、あとはマーケット動向をみながらしばらく待ってみるというのが選択肢になります。
このサイトでも時々転職マーケットの展望をレポートしているので参考にしてください。
問題は景気が悪化していくただ中にあっては、分かってても心理的にパニックになってしまうことです。
長年多くの人の転職の意思決定を見てきましたが、本当に多くの人が周囲のムードに引っ張られるように会社をやめてしまったり、焦って転職を決めてしまったりといった判断をしがちなのです。(私も一回それで失敗しました)
こういうことを避ける方法はないのでしょうか?
個人的におすすめなのはベタですが、先ほど引用した厚労省の有効求人倍率を見ることです。
これで客観的に今のマーケット感覚を把握できます。
もっと産業別なんかの細かいデータを見るとなおいいですが、ざっくりした傾向をみるだけならこれで十分ですね。
ずっと採用に関わっててますが、感覚的にいうと倍率が0.8を切るとかなり買い手市場(企業側有利)なマーケットです。
ちなみに2000年以降、0.8倍を下回った年は2003年までの就職氷河期と、2009〜2011のリーマンショック後の3年間です。
こういう状況ではいったん思考停止で転職しないと割り切って待つのも手かと思います。