口コミ・企業評価サイトはどの程度信頼すべきでしょうか?
こうしたサイトで低評価がついている企業への転職は控えた方がいいのでしょうか?
Open workをはじめとした企業を評価したりクチコミを書き込むサイト(以下クチコミサイト)がメジャーな存在になりました。
これはこれまで存在していた求職者と企業のあいだの情報の非対称性をある程度解消したという意味で画期的でした。
一昔前は応募する側は履歴書を書いて職歴書を書いて面接で根掘り葉掘り質問されてようやくオファーを得られたのに対して、だいたい応募者が得られる情報は企業のHPに書いてあることと面接の最後にオマケみたいにくっついてるQ&Aの時間で聞ける内容に限られました。
それがエージェントのビジネスが拡大したことで応募する側はもう少し企業の内情に近い情報を得られることができるようになりました。
ただしエージェントは基本的に入社してもらってナンボなのであまりネガティブな情報は出さない傾向にあったのですが、クチコミサイトは退職者や現在就業中の人からの情報がメインなので、真偽不明なものを含めまぁありとあらゆることが書かれます。
これでかつての企業側優位の状況から、むしろ応募者の方が情報をたくさん得られうるという逆転現象が発生したわけです。またこれは企業の職場環境改善をうながすことにもつながりました。
というふうに書くとクチコミサイト最高、みたいなふうに聞こえるかもしれませんが、実際にはいろいろ問題点もあります。
クチコミサイトの問題点・回答数
まずどのクチコミサイトも働きやすさとか給料といったいくつかの基準でもって各企業を定量評価する仕組みにしているのですが、企業によってはデータとしてはサンプル(=クチコミ数・評価数)が少なすぎるという問題があります。もっというと本当にクチコミや評価の数が統計的に意味ある水準に達しているのは大企業や人のとにかく入れ替わりが多い会社くらいのものです。
たとえば1000人の企業で離職率2%、そのうち仮に25%がクチコミサイトAで同社を評価したとしてもAに反映される評価は年たった5件です。これが5年積み重なっても25件なので、統計としてはかなり貧弱です。ところがクチコミサイトではたいてい評価結果をレーダーグラフでデカデカと表示してありますし、サンプル数からそのデータがどの程度の統計的確からしさを持つものなのかまで意識する人は少ないでしょう。
またたしかに当然時間の経過とともにいずれサンプルは積み上がってはいくのですが、今度はそのクチコミ・評価データ自体が古すぎるという別の問題が出てきます。たとえば5年もあれば経営者が交代する会社もたくさんあります。
クチコミサイトの問題点・回答のバイアス
次に回答のバイアスという問題があります。わざわざクチコミサイトを見たり書き込んだりする人はすでに辞めた人や辞めようとしている人の評価がメインであるため、その企業で一般的な退職の形に左右されるということです。
たとえば端的にいえば退職金をガッツリ払う会社なら評価が高くなります。定年退職が多い会社だとハッピーリタイヤした人の声は反映されず不利になります。もともと流動性の高い業態で、わりとカジュアルに人が辞めていく会社や、リクルートのようなそもそも途中で卒業することが一つのキャリアモデルとして確立されている会社は有利です。
また大きな変化が起きるとスコアが悪化することも予想されます。たとえば買収による企業カルチャーの変化、経営者の交代や事業の大幅なピボットといったイベントは、仮にその結果多くの人にとってポジティブな変化がもたらされていたとしてもその変化を嫌う人は必ず出てきます。そしてこうした人たちがクチコミサイトになだれ込むことでスコアが押し下げられます。
このようにクチコミサイトの回答はその企業の制度・離職率・社風・業界・回答者の立ち位置などによってバイアスがかかりますが、これはその企業をかなり深く調べないとわかりません。
クチコミサイトの問題点・評価基準の偏り
また企業を評価する際の評価基準の偏りという問題があります。たとえばOpen workには20代の成長環境という項目があるのですが、なんで20代だけなのか。
こんなふうにクチコミサイトの評価基準はなかなかツッコミどころがあるのですが「総合評価」は前項目のアベレージなので、20代という特定年代のみを対象とした評価項目が総合評価の12.5%を占めることになります。
これが自分にとって意味のある数字なのかは考える必要があるでしょう。
クチコミサイトをどう活用したらよいか?
このようにクチコミサイトは(あたりまえですが)かならずしも会社の実態を表しきれない部分があります。
とはいえ色々書いてはみましたが基本的には便利なものです。活用する際は数字だけを鵜呑みにするのではなく、コメントも含めて多角的に理解する姿勢を持ちましょう。
また自分が内定を得た会社や、これから入社する会社の企業評価が低くても必ずしも悲観する必要はないかもしれません。それはその会社に合わなかった人たちによる低評価であって、中に残っている人たちはハッピーに働いている可能性もあります。
したがってクチコミサイトを活用する際には以下の点に注意すると良いと思います。
- 定量的な企業評価については大まかなトレンドを把握する。上述した一時的な変化によるスコアダウンが起きている場合、何年かするとスコアが上昇トレンドを描きます。この場合は表面的なスコア以上に良好な職場環境になっている可能性が高いです。
- 訂正的なコメントについては、ネガティブなものがどのような利害関係のもとに書かれたものかをイメージする。ひょっとしたらそのネガティブなコメントの原因になった利害関係は自分には関係ないものかもしれません。このためにはその企業についての多角的な情報収集が必要で、エージェントのアドバイスを仰ぐことも有効だと思います。