キャリアについてのよしなし

MBAで元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成の戦略と定石を解説します 毎週木曜を含む週1〜2回更新

リストラ・被買収など大きな変化のただなかで情報を正しく認識するコツ

景況感の悪化にともない、今後職場にリストラ・企業買収といった大きな変化が押しよせるケースが増えてくるのではないかと思います。今日はこういうケースで「辞めるor留まる」といった意思決定を正しく行うために、社内で飛び交う情報・噂話や自分の置かれた状況を適切に認識するためのポイントみたいな話です。

 

自分の会社が買収された時に何が起こるか

いきなり私事ですが、以前買収されたあとの統合(Post Merger Integration, PMI)フェーズの会社で、入社早々に人事制度・組織・文化面での様々な変革プロジェクト携わる機会を得たことがあります。

 

それでその時よく分かったのですが、企業買収という事実(ファクト)に対し、その事実を正しく認識できる人はほとんどいないのです。

 

普通買収されるというのは完全なゲームチェンジで、社内の勢力図がばっさり入替ります。評価制度も給与制度も手当も福利厚生も変わります。

で、そういうことはある程度事実を客観的に把握できればだいたい想像がつくのですが、残念ながら人間の認知・認識というのは彼等自身の利害関係と場のモメンタムに大きく左右されるため、私を含め多くの人間が事実を正しく把握できなくなります。

 

その時私の会社にはざっくり3つのグループの人がいました。

既得権益層、今良いポジションを得ていて変化に対して抵抗感を感じている人たち

不満層、既得権益層と既存の体制に不満がある人たち

その他大勢 

 

それで各グループごとに好き勝手な予想をした内容が噂話として広がります。①既得権益層の人達は、買収後の社員の扱いについて過度に悲観的な予想をしたりしてささやかな抵抗を試みたりします。

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面白いもので、私が携わったケースでは①既得権益層はまだまだ社内での影響力が大きかったため、この人達に「めちゃくちゃ厳しい能力主義になるらしい」「福利厚生がごっそり削られるらしい」みたいな情報が流され(いずれも大嘘)、それにつられて会社を辞める人もいました。

 

②不満層の人達は逆に変化への熱望によって、買収後の体制に対して過剰な期待を寄せるようになります。③その他の人達①既得権益層②不満層の力関係を見極めつつ、耳にした噂話をもとに右往左往して転職しようか留まろうか紋々と考えたりします。

 

そしてモメンタムが変化していきます。じょじょに買収後の体制の全容が見えるようになるにつれ、抵抗しても無駄だということが分かりはじめます。すると①不満層の人達は転職するか、諦めて引き続き悲観的観測を垂れ流しつつ既得権益を守ろうとし、だんだん③その他大勢に相手にされなくなります。②不満層はだんだん冷静になって過度な期待を持たなくなります。

 

もう一度整理しましょう。まず「買収されました」という事実はゆるぎません。が、その事実を認識した人達が垂れ流す情報(噂話のたぐい含む)は個々人の利害関係や場のモメンタムに影響されます。なので、

  • 情報の出所となった人がどういう利害関係(あるいは動機付け・恐怖感)を持っているか
  • 今どういう空気が支配的か
  • さらに自分自身は客観的に見てどういう利害関係のもとに情報を認知しているか(メタ認知といいます)

を理解しないと、実際の買収の結果何が起こりそうなのかは正しく理解できなりますし、変な情報に振り回されてキャリア上の意思決定(特に転職か留まるか)をしてしまうことになります。


雑に図にするとこんな感じです。

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大規模なリストラが始まったケースでは・・

これも自分自身の経験ですが、リーマンショックの時に自分の勤めていた人材紹介会社で大規模なリストラが始まったことがありました。

 

この時も日頃から経営に不満でもともと転職する気マンマンな人がいて「財務諸表を見たら今のキャッシュが云々」みたいなもっともらしい理由を見つけて「この会社はもう潰れる」「早く転職しなきゃだめだ」と騒ぎ立てていました。私は人材紹介なんて固定費に締める人件費割合がめちゃくちゃ大きいので、リストラで縮小均衡していけば当座はしのげるだろうなと思って無視していました。結局私もその会社は辞めて今にいたるのですが、同社はその後V字回復して大きく業績を伸ばしました。

 

流れてくる情報を正しく認識するためには一度引いた、俯瞰的な視点でその情報見ることが大事です。そうでないと焦って無駄な転職をしたり、辞め時を間違えたりしてしまいます。今は変化の大きな時ですから、この点は改めて強調する必要があるでしょう。

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