ファッションが好き、出版が好き、という具合に特定の業界の中で働くことがモチベーションになる人は少なくありません。
ところが以前のエントリーで書いたように、業界構造はそこで働く人の年収を大きく左右します。
もし自分が大好きな業界が構造的な低年収業界だった場合、どう対処すればよいのでしょうか?
この質問に対するありがちな回答は、
- 生活費を下げましょう
- 配偶者・パートナーを見つけてダブルインカム化しましょう
- 副業をがんばりましょう
といったものだと思いますが、他の解決方法を考えてみたいと思います。
出世は一つの解になりえる?
まずは今回もハーバードビジネスレビュー(HBR)の論文から参考になりそうなものを紹介しましょう。
大手ヘッドハンティング会社、コーン・フェリー・ヘイグループの上級管理職を務めるクレイグ・ローリー氏はこう述べています。
"しかし筆者の経験では、企業の給与水準を最も大きく左右するのはビジネスモデルである。"
HBR2018年8月号「企業間の給与格差はビジネスモデルから生まれる」より引用
面白いことにこの記事によると、「業界格差は上級マネジメント、経営陣に近づくにつれ消えていく」そうです。
私も人材紹介をやっていた時このことは実感していました。役員とか事業部長クラスになると、投資銀行等の飛びぬけた例を除いてそこまで業界による年収格差がないのです。
これはなぜかというと、経営層は業界の垣根を超えた経営層転職マーケットが存在していて、 たとえ低年収業界の企業であっても 人を採用したりキープしたりするのに高給を払わざるをえないからです。
つまり以前ご紹介した、平準化圧力が働くということですね。
したがってなんだか身も蓋もないですが実は全力で出世をめざすというのが一つの解になりえます。
いや自分には経営層を目指すなんてとても・・・という声が聞こえてきそうですが、実は低年収業界は離職率が高いことが多いので、頑張ってれば一つの上のポジションが空いたりして出世しやすかったりします。
ツブシのきく職種にスライドする
同じ理由で、間接部門のミドルオフィス・バックオフィス(マーケティングや経理など)にキャリアチェンジするのもそこそこ有効です(注1)。
こういった職種は業界の垣根を超えた転職マーケットが存在してるので、やはり職種内での平準化圧力がはたらきます。そのためフロント職種に比べると年収格差は低いです(そうは言ってもそれなりに差がでますけどね)。
好きな業界の現場で働きたいんです、という場合
上記二つの方法はいずれも、特にサービス業の場合に現場からは離れていってしまうという問題があります。
つまり飲食業界でのホール、アパレルの販売やデザインといった「その業界のその業界らしい部分」との接点が少なくなっていってしまうのです。
これはなかなか悩ましい問題ですが、こういう時こそ独立・起業を考えてもいいのではないかと思います。
自分も現場に出つつ、ほどほどに人を使うことで普通に雇われて働くよりも高い年収を実現できる可能性があります。飲食などは典型ですね。
このパターンで成功するには才能か工夫(あるいはその両方)が必要ですが、現場への強い情熱があるなら考えるべきでしょう。
—————
注1)ミドルバックでも極端に低年収になるケースがあります。それは、
1)業務自体の付加価値があまりない場合(一般事務職など)
2)職能資格制度で職種別賃金になってないため会社全体が低賃金状態になっている
こういったケースでは転職を通じて解決するべきでしょう。1なら少しでも付加価値と市場相場の高い職種に、2なら会社を変えることを考えましょう。