さて前回はどういう時に「マーケット水準に対して給料が高すぎる」状態が発生しやすいかを整理しましました。
こうした「マーケット水準に対して今の年収が高い」ケースに加えて、年齢が40歳を超えてくると自身が管理職になってしまっているため年収維持が難しいというケースが出てきます。
中途採用で管理職を募集することは相対的に多くないため、転職時に肩書きを下げる必要に迫られ、結果年収ダウンになるというパターンです。
また年齢が若くても起業・独立・ベンチャーへの転職といったハイリスク・ハイリターン型の選択肢をとる時もしばしば年収ダウン転職を乗り切る必要がでてきます。
では具体的にどうすれば良いのでしょうか?
年収ダウンを乗り切る具体的な方法
年収ダウン転職にどう対処するか。
Harvard Business Reviewオンライン版の記事、「Can you afford to change your career?(あなたはキャリアチェンジをするだけの経済的余裕があるか?)」に示されているいくつかの対処方法を紹介したいと思います。
1. 生活シュミレーションをしておく。一度、ダウン後の月収をもとに実際に生活してみることで、具体的に生活にどういった影響が出てくるかをイメージできます。
結果「やっぱりやめておこう」となるかもしれませんが、転職して後戻りできなくなってからリカバーするより良いでしょう。
よく「今の年収は600万だが前職では800万だったので前職水準に戻したいです!」という方がいるのですが、経験上難しいことが多いですね。
2. 緊急一時資金の確保。年収ダウン転職後は精神的な余裕も以前より少なくなりますが、「いざという時に使える資金」を確保しておくことで精神安定を図れます。
上記のダウン後年収をもとに生活し、そのあまりを貯金に回すことで確保するのが良いでしょう。
3. リスク管理。個々人が取れるリスク総量は家族構成・負債などの財政状況・本人のマーケットバリューなどいろいろな要因にってまちまちになります。
自分のリスク許容度と、これからチャレンジしようとしていることのリスクを事前に天秤にかけることで、過度なリスクを負うことを避ける。たとえば配偶者の収入がないとか医療保険の類に入っていないなら、拙速な転職は避け必要な年収を得られるオファーが出るまで粘り強く転職するといった例が上げられています。
4. バックアッププランを持つ。これは特にリスクを取った時に崩れがちなメンタルを保つ上で効果的です。
たとえばキャリアチェンジ後うまくいかなかった時に出戻りできるよう、元同僚と関係を維持しておく。あるいは元いた業界の規制やトレンドにアンテナをはっておくことや、関連する資格が期限切れにならないよう更新しておくなどが挙げられます。
また記事にはないですが、特に起業・独立などリスクを伴うキャリアチェンジをするときは、うまくいっていない時の撤退期限を事前に決めておくとメンタル維持に有効ですね。
5. パートナー(あるいは配偶者)の期待値コントロール。いわゆる「嫁ブロック」にならないよう、事前にうまく根回し・交渉しておくことです。これができていない人は本当に多いです。
大事なことは時間軸を長めにとること
ひとつはっきりしているのは、これらソリューションはいずれも時間がかかるということです。
前回も書いたように、自分の今の年収がマーケット水準に対して高いかどうかはエージェントにきけば割とあっさり教えてくれるので、どうも年収が下がりそうだぞとなったら早いうちから時間をかけて上の方法にとりくんでおくことが大事でしょう。
したがって転職というプロジェクトにかける時間軸を長めにとり、1年位時間をかけて成功させる位の気持ちで取り組むと良いと思います。
現職に残るのも選択肢
もちろん現職に残るのも選択肢です。
仮にそれが第一希望ではなかったとしても、上記のようなリスク許容度などをしっかり吟味した上での選択であればそれなりに納得感をもって頑張れるものです。
チャレンジするにせよしないにせよ、しっかり考えず漠然と意思決定してしまうのが一番よくないです。納得した上で現職に残るのであれば不満のある勤務先だったとしても意外と頑張れるものです。
転職先に過度な期待を持ちすぎない
もう一点、年収ダウンしたからといって転職先に過度な期待を持ち過ぎないことも大事です。
年収ダウン転職をすると、その意思決定を心の中で正当化しようとして転職先を(働く前から)過度に美化してしまいがちです。
「そもそも自分はOverpaidだったんだ」と一度冷静になることで無用な失望を避けることができます。