市場価値を高めるために、どんな領域で努力すべきでしょうか?これはいつも悩ましいものです。そこで、将来もこういう領域は残るだろうから比較的おすすめしやすいですよ、というのが今回のお題です。
私は採用マネージャーという職業柄、”労働力"というカテゴリーの中でいろいろなタイプの業者と会います。
で、昨今の人手不足のなか、彼らは「ウチのサービスを使うと(今御社が雇っている人材の代わりに)これだけ労働力を確保できますよ!」という類の提案をしてきます。
彼等の話を色々と聞いているとトレンドみたいなのが見えてくるんですが、今日はそういう話をしようと思います。聞いた話がメインなので全体的にソースなしなのですがその点はご容赦ください。
トレンド1 RPAがすごい
これ、普段接点がないとあまり意識しないかもなのですが、RPA(ロボ・AIによる事務仕事の自動化)の進化っぷりが想像以上にえらいことになっています。
たとえば法人営業なんかだと、お客さんの要望をヒアリングしたあとの
- 営業事務の人が要望内容と商品のラインナップとか在庫とか見ながら提案書や見積もりを作る
- 無事受注したあと受注内容をシステムに入力する。
みたいな、事務作業が全部自動化されます。
あとはたとえば私みたいな採用の仕事をしていると候補者との面接日程の調整っていう面倒な仕事があって、
- 面接官と応募者双方の予定を確認して、
- 両方OKの日時を見つけたら面接官の予定をシステムでブロックして、
- 候補者には面接時間や場所などを書いたメールを送る
みたいな業務なんですが、これも全部自動化されます。人間がやるのはイレギュラーな対応が必要なやつだけ。
今も大手企業なんかは受発注の定型業務は請負に出して、社内の人はイレギュラー対応だけ、なんて会社ありますけど、将来はこれが請負からロボになってコストも下がりそうです。
しかも、いずれはこういうことの指示が音声入力でできるようになるらしくて、「候補者の○○さんって方、書類選考合格だから面接日程しておいて!」とロボットに話すだけであとは勝手にやってくれて結果が報告されるんだそうです。人間みたいに報告モレもありません。
トレンド2 外国人の増加
外国人労働者が増えている背景とかはいまさら私が言うまでもないと思うので割愛しますが、私の感覚的に企業側も外国人採用への抵抗感が薄れてきている感じがあります。
コンビニが外国人店員を採用しはじめたのって2000年代中頃だった記憶がありますが、最初私へぇ〜と思った記憶があります。単純にそういう光景をそれまで見たことなかったので。
でももうそれから15年くらいたって、今の20代の人たちって幼少期から「外国人がいる風景」が普通なんですよね。もっと上の世代も明らかに慣れてきている。
それで、エージェントとかに外国人を積極採用している会社を聞くとびっくりするような日系大手の名前が出てきます。意外とコテコテの財閥系企業なんかでも外資とジョイントベンチャーやった経験とかで慣れてきている。一昔前は外国人採用がニュースになりましたが、今はそれがニュースにならなくなっていますしね。
このトレンドの中で残る仕事、残らない仕事の見分け方
こういう状況で、将来も長く残りつづけ、自分の時間やお金を投資する価値のある仕事は何かな?と検討する際、以下のフレームで考えると良いと思います。
RPAの代替リスク × 外国人による代替リスク
まずRPAの代替リスクが少ない仕事って何かというと、情緒的価値をつけやすい仕事 だろうなと思います。
情緒的価値というのはマーケティング用語で、こういうのです。
引用:https://www.sanoakihiko.com/blog/branding/493.html
上の表は商品・サービスでの場合について書いてますが、人材も労働市場での商品だと考えると、われわれ労働者も機能的価値や情緒的価値をお客さんとか上司とかに提供している存在です。
で、RPAで置き換え可能なのは基本的に人間の提供する機能的価値ばっかりなので、情緒的価値の提供スキルがある人材になっているとRPAの代替リスクは低いです。
具体的には、
- あの人にお願いしたいと思わせられる気持ちのいいコミュニケーションができる
- あの人から買いたいと思えるような感じの良さがある
- 思わず購入ボタンをクリックしたくなるような魅力的な商品説明文を書ける
- やりとりしていてストレスのないメールが書ける
みたいな、口頭や文章でのコミュニケーションに関連する領域です。こういうスキルがしっかりあると、ロボにやられづらい。
あとは現実的な話、清潔感とかを含めたいわゆるルックスも情緒的価値を高めるので、身だしなみや外見に自己投資するのは長期的な費用対効果が高いと思います。
〜〜〜
次に外国人に代替されづらい仕事ですが、日本人である必要性があるとか、日本語自体への理解度が高いレベルで求められる仕事だと代替されづらいです。
具体的にはこういうのです。
- 日本人である必要性があるもの。たとえば人脈とか地縁で売るタイプの地域密着型の生保営業など)
- 極端に難易度の高い日本語を読みこなす必要があったり、ネイティブレベルじゃないとダメな仕事。たとえば法務の法解釈の業務とか(法律関係の日本語はちょっと勉強したくらいでは読めません)、新聞記者・ライターなど。
こういうのを、ジャーナリストの渡邉正裕さんという方が「日本人メリット」と呼んでいるのですが(※脚注)、この日本人メリットがある仕事は外国人に代替されづらいです。
タスクごとに代替リスクを判定しましょう
ここからが肝心なのですが、たいていの仕事はRPAや外国人の代替リスクが高い業務・低い業務がチャンポンになっているので、それをタスクごとに分けて考えると良いです。
たとえば私の専門とする採用担当の場合はこんな感じです。
|
RPA代替
【小】
|
RPA代替
【中〜大】
|
外国人代替
【小】
|
広告作成・
ブランディング
|
書類選考
|
外国人代替 【中〜大】
|
面接
オファー口説き
|
日程調整
|
採用の場合、オファーしたあとに口説く仕事は情緒的価値をつけやすいのでスキルがあればロボには代替されづらい。ただし外国人でも日本語がそこそこしゃべれて熱心にやればできないわけではないのでそっちのリスクは残ります。
また書類選考は結構難しい日本語を読む必要があるので外国人には難しいのですが、一方で最近は一定の条件である程度足切りをしてくれるAIが出てきたりしていて、多少はRPA代替されそうです。
こうやって細かくみていくと、応募したい!と思えるような魅力的な日本語広告を書くことができればRPA・外国人いずれも代替リスクが低いので、この領域で修行したり自己投資すると食いっぱぐれが少なそうだな、と判断できます。
・・・と、こんな具合に一度自分の仕事を業務ごとに細分化して、それぞれの代替リスクがどのくらいあるかをみておくことをおすすめします。
代替リスクの高いものばかりなら、リスクの低いものの比重を高められないか検討するか、あとは思い切って転職しましょう。
(※)渡邉正裕 著「10年後に食える仕事 食えない仕事」東洋経済新聞社 参考