私は資格を盲目的に信じてキャリア形成するのは危険だと思っているんですけど、たまに何かの資格や学歴がニーズの波をとらえてやたらと大きな市場価値につながることがあります。
たとえば2000年代中頃にUSCPA(米国公認会計士)の資格ブームがきて、これがあれば大手監査法人どこでも入れるみたいなときがありました。
で、今にわかに注目を浴びているのがデザインスクール・アートスクールへの留学という選択肢です。
実際、デザインスクール・アートスクールへの留学がどれだけ市場価値につながるのかを考察したいと思います。
デザイナー的な手法を学ぶのは思った以上に役立つかも
いわゆるデザイン思考をはじめとする、デザイナー・アーティスト的な思考法はデザイナーや製品開発職をはじめとしたイノベーション職種にのみ有効だと思われがちですが、意外と色々な場面で役立ちます。
実は私も一度デザイン思考についての研修を受けたことがあって、その後自分の担当する採用プロジェクトのコンセプト策定をするときにその手法を取り入れてみたことがあります。
で、これが思った以上に有効でした。
デザイン思考特有の深いユーザー理解を重視するスタンスや早い段階でプロトタイプを作る手法というのはミドル・バックオフィスの企画系の職種であれば意外と広く活用でき、自分的にはむしろMBAで教わった一部の内容より役立つのでは、と感じたほどです。
こういったことを深く学べるならデザインスクール・アートスクールへの進学も面白そうだな、と感じましたね。
キャリア展開は結構魅力的かも
さて実際マーケットバリューやその後のキャリアの展開にどうつながるか、です。
GAFAに代表されるようなテック系の有力企業の多く経営幹部に研究開発や財務にも精通したデザイナーをおいています。このトレンドは日本でも一般化するでしょう。
著名ヘッドハンターの山口周さんはこういう動きを「経営に求められるものがサイエンスからアートに変わってきた」と表現しています(*1)。
またデザイン思考を知るためのオススメ本のひとつ、「21世紀のビジネスでデザイン思考が必要な理由」によると、デザインスクール・アートスクール直後のキャリア展開としては例えばUXデザイナーやデザインエンジニアなどがあるとのこと。
いずれもここ何年かのニーズが上昇基調にある領域です。
何より魅力的なのはデザイン・アート系の領域は、前回のエントリーで書いたようなAI・機械による代替リスクが低いことでしょう。
ただ問題は、現状では日本の転職市場ですごく評価されているとはいいがたい点ですね。
デザインスクールへの進学・留学というのが特に日本ではまだ一般的ではないため、MBAなどにくらべてレジュメ上でパッと見何を学んできたのかが伝わりづらいことは悩ましい点です。
なので、(普通は必要ないんですけど)大学でどういった内容を学んだのかをある程度レジュメに盛り込んで書類選考する側にイメージしやすくさせてあげた方が良いように思います。
どうせいくなら海外へ?
個人的には、難易度・費用とも高いですが海外のデザインスクールに30前後までに留学するというパターンにチャレンジして欲しい気がします。
なぜかというと、MBAと同じで少なくとも英語力の向上という付加的なスキル向上が見込めるためです。
デザイン・アート分野のニーズがたとえ読みきれなくても英語力のニーズがなくなることはむこうしばらくないでしょう。
私の知り合いも30歳で社会学を学びに留学していて、特にビジネスに役立つ学問ではなかったですが「海外の大学院を卒業できるくらいの英語力」というのを売りにして大手メーカーに再就職していました。
それに比べるとデザイン・アート分野は特にソフトウェア分野を中心にビジネス需要が見込まれることからなおさら筋が良さそうです。
お金はかかりますが関心が高いなら悪くない選択肢だと思います。
訳注
*1 日経新聞2018年10月14日から抜粋
参考文献
「21世紀のビジネスでデザイン思考が必要な理由」