キャリアについてのよしなし

MBAで元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成の戦略と定石を解説します 現在は不定期更新

QA:生産技術+データのキャリア

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今回はQ&Aコーナーをやりたいと思います。結構前に頂いたものなのですが、大変興味深いご相談内容だったので取り上げます。

生産技術+データ系のキャリアについて

いつもキャリアを作る際の考え方を発信いただきありがとうございます。内容が非常に面白く、更新のたび記事を読ませていただいております。

 

今回、キャリア相談を募集しているという記事を見て、ご相談に乗っていただきたく、ご連絡いたしました。

 

30歳男性で、大学院修士課程終了後、業界大手の自動車部品メーカーへ入社しました。

 

生産技術職として、本社・工場を経験しましたが、現職について将来への不安を覚えたため、社内公募を活用して新規事業企画系部署への異動が決まっています。(来年異動予定)

 

異動先では、主にPythonを使用したデータ分析により、新規事業を企画・提案する業務に就くのですが、この異動が正解だったのか、また、今後のキャリアをどのように築いたらよいか不安です。

 

生産技術+データ分析の需要はどの程度あるのか、また、今後、年収を高めるためのよりよいキャリアを築くため、ご意見を頂けないでしょうか。

★★★

というわけでなかなか面白いお題を頂きました。考え出すと色々と示唆に富むのでつらつらと書いていきたいと思います。

そもそも生産技術とは

このサイトには色々な読者がいるので先に軽く解説しておくと、生産技術はものづくりのエンジニアの一種です。工場での量産のための技術開発をしたり工程をデザインしたりします。

機械系の専攻がいちばん直接的に関連しますが、日本の場合理系の新卒であれば幅広くこの職種に就くチャンスがあります。

生産技術+データ分析の見通し

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まず生産技術+データ分析の需要ですが、これは極めて先行きの有望な組み合わせだと思います。

 

たとえばボストンコンサルティンググループは最近の調査で、自動車業界においてデジタル領域が将来的により重要になることを示す回答を得たそうです。

“Manufacturers are increasingly using digital technologies. Of automotive respondents, 70% said that plant digitization would be highly relevant in 2030, compared with 13% who think it is important today. “
出典:https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2016/leaning-manufacturing-operations-factory-of-future

このデジタル領域にはもちろんデータ関連も含まれています。

"Using Big Data and Analytics. Manufacturers are using applications to automatically analyze large amounts of data. To produce cylinder heads at its plant in Untertürkheim, Germany, Mercedes-Benz uses predictive analytics to examine more than 600 parameters that influence quality."

出典:同上

こういった領域は他にもあります。たとえば化学です。下記はマッキンゼーが出している記事ですが、これによると化学業界はビッグデータを活用したサプライチェーンの最適化によって大きくメリットを得られるということです。

www.mckinsey.com

 

ほかにも知り合いのエージェントから製薬業界なども今後データ活用が進んでいくという話を聞きます。

 

すでに何年も前からシックスシグマ的な、伝統的な統計的手法による生産改善の限界もささやかれていましたし、ビッグデータの活用はこれから長く続いていくトレンドだと思います。

 

実はすでにこのトレンドは転職市場にも反映されており、昨年あたりからメーカーにおける関連ポジションの求人も激増しているようです。

 

ちなみに募集元は日系企業がほとんどで、外資は少ないですね。これは残念ながら外資系企業が日本の工場に投資する気があまりないことが多いのが一つの理由でしょう。

 

もちろんその時々で求人数の増減はあるかもしれませんが、それ以前に日本の大学教育に由来する根本的な需給ギャップは当面解消されないでしょうから基本的に高止まりだと思います。

 

というわけで生産技術+データというのは自分の専門領域で差別化していくためのスキルの組み合わせとして非常によい選択だと考えてよいと思います。

このあたりの専門性とスキルをどう組み合わせるかの話は下記の記事で色々書きました。

www.career-yoshinashi.com

今回の異動について

たしかに生産技術関連部署での募集があれば一番よかったでしょうが、今回の異動先部署でもまったく問題ありません。

 

生産技術の経験をもち、Pythonを使ったデータ分析ができれば引く手数多だと思います。現在企業側が経験者を求めている一方で、マーケットには生産技術の経験はあってもビッグデータに関連した経験をもつ人材が圧倒的に不足しているからです。

 

ただし異動先はマーケティングということでビジネスよりの部署になります。なのでもし将来的に技術よりの専門性を追求していかれたいなら5年をめど次に移ると良いです。再度異動を狙ってもいいですし転職でもいいでしょう。

 

あまり今の部署に長くいると社外からは「そっち(ビジネス)よりの人」に見られてしまい、技術サイドに戻るのは特に転職だとだんだん難しくなってきます。

 

要するに30代後半に入るまでに自分の専門を明確にするべきということです。

 

資格取得について

中小企業診断士ですが、大変難しい資格で取得されている方は尊敬します。ただし転職に活かすのが目的なら個人的にはさほどおすすめしません。理由は単純に、取得が大変な割に中途採用で評価している企業をあまり見ないからです。

 

中小企業診断士が役立つ場面ももちろんあって、たとえばこの資格を看板に独立する時とかです。診断士があることで地方の商工会議所とかから紹介を受けやすくなったりといった効果はあると思います(何の馬の骨とも分からない人よりわかりやすい看板がある方がいいですよね)。

 

ただし現在のお勤め先が大手ですから、現職で部長クラスとかのわかりやすい肩書きまでいってしまえばそれでも同様の効果はあるかもしれません。

 

また今からしっかりメーカーでのビッグデータ活用という分野を経験されればこの分野では第一人者になれるでしょうから、そうなるともはや看板がなくても(十分差別化されているので)独立できそうにも思えます。

 

要するに大変なのでそこまでおすすめしないものの、独立への思いがとても強いなら検討の価値はあり、ということです。

まとめ

ということで全体をまとめます。

 

まず、よく考えられていますし、正直にいって極めて将来の見通しの明るいキャリア形成になっているように思います。

 

強いていえば、希望年収水準を割合明確に持たれていらっしゃるようですが、もし本気で実現するならそのためには多少転職が必要になるかなと。そのタイミングや転職先をしっかり見極めたいところですね。

というのも特にメーカーで顕著ですが、現在日本ではデータ関連職が新しすぎて、年収水準(市場価格)が定まってない感じなんですよね。

 

なので同じような仕事内容でも年収が結構ブレてくると思います。これは貴社でも同様なのではないかと推察します。

 

はたして(報酬について保守的なことが多い)日系メーカーが、希少なデータ人材だからといって30代前〜中盤の方に800〜1000万をポンと出せるかというと、ちょっと分からないですね。年収だけでいえば畑は全然ちがいますがやはりITなどの方が出すと思いますし、しっかりPythonができるようになれば転職も可能ではないかなと。おそらくご希望とはズレると思いますがご参考まで。

 

以上、ご相談ありがとうございました。また何かあればご相談ください!

 

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