キャリアについてのよしなし

MBAで元エージェントの外資系採用マネージャーがキャリア形成の戦略と定石を解説します 現在は不定期更新

日本人にとっての海外MBAの本当の価値、費用回収の現実は?

今回はそこまで需要のなさそうなテーマですが、日本人にとっての海外MBAのリスクと価値について。

 

私はわざわざ会社を辞めて自腹で留学し(私費留学)ヨーロッパの某国でMBAを取得してるのですが、私自身の実感をもとに個人的視点で書き綴ってみたいと思います。

 

もてやされたのもはるか昔、今ではすっかりマイナーな選択肢となってしまった感のある海外MBA取得ですが、実際のところどういったバリューが期待できるのでしょうか?またどんなリスクを考えるべきでしょうか?

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社費か私費かで異なる、留学のリスク

まずはリスクの方から見てみましょう。

海外MBA留学の場合、リスクは社費留学(会社費用負担での留学)か私費留学かで大きくことなります。

 

大企業でしばしば行われる社費留学の場合、リスクは端的にいって現職に縛られるという、ほぼその一点だけです。

 

多くの企業は社員を社費留学をさせる場合、その社員が留学終了後すぐに転職してしまうと目も当てられないので、留学後一定期間内に退職する社員に留学費用の返還を求められるようにしています。

 

なので社員の側から言えば、せっかく留学して刺激を受け視野が広がっても、転職や起業といった選択肢をとりづらくなります。

 

逆に言えば現職に長くとどまるつもりの人であれば問題ないわけです。

 

(ただし後述しますが、海外MBAに留学すると多様なクラスメイトからいやというほど刺激をうけます。彼等と接したあとに留学にきていてもなお会社に縛られてることに疑問を感じたり嫌気がさす人も多いのです。ですので気が変わった時に備えて会社に留学費用を返還できる位の資金を蓄えておくのがおすすめです)

 

また実務からしばらく離れ、同僚との出世レースに取り残されるのではという不安を抱く人がいますが、この点はあまり心配する必要はないでしょう。

 

普通留学させた人材に対しては企業としても期待をかけて投資回収をしにいきますので、留学後に良いポジションに回されることが多く、1~2年のブランクはすぐ取り戻せます。

 

私費留学は大変

一方私費留学の場合、財政負担の大きさ再就職リスクという2つの大きな問題に直面します。

 

海外MBAの財政負担の大きさは一般に良く知られていますが、円高で割安な国・学校を選んだケースですら学費や生活費トータルで年600~700万、最近の為替レートですと欧米ならだいたい年に1000万円以上かかるでしょう。

 

これに各種試験の受験費用や、予備校の費用などがかかります。準備費用だけで新車を買える位かかったという話もザラです

 

(こうやって書くと自分でとった選択肢ながらほとんど狂気の沙汰ですね)

 

そもそもキャリア形成戦略の観点から言えば、本来大金と1年から2年の間という長い時間を留学という中断しづらい投資にふりあてるというのはリスクが高すぎます。(リアルオプション自己投資)

 

加えて1〜2年後卒業した時点での転職マーケットの状況がどうなっているかわからないという難しさもつきまといます。

 

マーケットの状態次第では年収Upで投資回収どころか、希望する職種がなかなか見つからないケースすら考えられます。

 

こういったこともあってか、最近では日本人が相対的に裕福でなくなってきたこともあてか、私費でMBA留学する人は全然多くありません。(データ) 私が留学予備校に通っていた時は半分以上は社費留学でした。

 

そんなわけで私費留学を志す人にとっては非常に厳しき道なのが海外MBA留学なのですが、ではそうしてまで進む価値はあるのでしょうか?

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それでもいくべき理由1英語力をジャンプさせることができる

確実に言えるのは、海外留学なら英語力をジャンプアップさせることができます。そして少なくとも英語力の向上はかなりの確率で(年収Upという形で)報われやすい、ということです。(逆に言えばMBAそのものが年収Upにつながるかは結構職種によります)

 

「それなら英語学校に行って国内で英語力アップして外資系に転職するなり海外就職するなりすればいいのでは」と思われるかもしれませんが、これは結構ハードルが高いです。

 

いくら学校で英語を鍛えても、いきなり実務の世界に転職という形で飛び込むのはかなり難易度が高いものです(転職そのものの難しさと英語のチャレンジを同時に相手にするのは賢明ではありません)。

 

その点留学という、実践的ながらもある意味失敗が致命的ではない環境で英語力を磨くとほどほどに自信がつき実務への移行がスムーズにいきます。

 

また留学の代わりにワーホリという手も取れるのですが、現状ではワーホリ期間は一般に「遊びの期間」というイメージが強くあまりジョブマーケットでそこまで評価されない印象があります(逆にキャリアを考えず割り切ってしまえば良いと思うんですけどね、ワーホリ)。

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MBAだと、「ビジネスを学んでました」という大義名分のもと英語力をUpできます。これが大きいです。

 

加えてMBAですとビジネス方面に特化したボキャブラリーが強化されるのもメリットです。

 

準備期間中の撤退はOK?

また日本の場合、英語力自体がかなりマーケットバリューあるため、準備期間中の撤退であればロスを最小化しつつそれなりに「英語力Up」リターンを得られます。

したがって英語力の一点に限って言えば、海外MBA留学は悪い選択ではないです。

 

それでもいくべき理由2メンタルブロックが外れるという価値

もう一つ海外MBA留学で得られる大きな価値として、自分が無意識にもっている制約(メンタルブロック)が外れるということが挙げられます。

 

多くの海外MBAコースには本当に様々な人間がいます。私のコースでは、起業を志す人間がたくさんいたのはもちろん、インド人産科医、リビア人の元国連スタッフ、ガーナ人農家といった個性豊かな面々がいました。

こういう連中と経営について日夜議論するわけですからイヤでも刺激をうけます。

 

加えて日本特有の同調圧力のない環境に1~2年に思い切り身を浸すと、なんだかどんな選択肢を取ることも可能に思えてくるんですね。

 

少なくとも少し変わった、マイナーな選択肢をとることによる周囲の目は全然気になりらなくなります。

 

こういう、メンタルブロックを外すことで得られる解放感は素晴らしいものです。

 

これは経済的価値という(ある意味では退屈な)ものさしでは測れない海外MBAの価値なのかなと思います。

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