こういうサイトをやっているので最近色々な人の転職の日記とかツイッターとかを読むようになりました。
それで分かったんですが、
- 市場価値(マーケットバリュー)
- 市場価格(マーケットプライス、年収予測はこの一種)
- 現年収
の3つを混同している感じの人がけっこういるようです。
市場価値は年収予測からは正確に測れないし、現年収とも別ものです。
ここを混同していると自分の市場価値を客観的にとらえることができなくなるので、それぞれ正しい理解をしておく必要があります。なのでちょっとそのへんの解説っぽいエントリーを書こうと思います。
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人材としての市場価値(マーケットバリュー)は、その人がもっている【ジョブマーケット(就職・転職市場)で値段のつく価値(スキル、学歴や資格、経験など)をトータルしたもの】です。
この市場価値は一人一人の個人がベースになります。
一方で市場価格(マーケットプライス)は、【会社の中のひとつひとつの役割(ポジション)がだいたいマーケットでどれ位の年収付けになっているかを表すもの】です。
なのでこちらは役割(ポジション)がベースになります。
例えばITの営業マネージャーなら統計的な年収の中央値はいくらで、多くの人はこの範囲に収まります、みたいな感じ。
最近は一部の人材紹介会社がHP上に転職時の年収予測のコーナーを作ってますが、これもその一種ですね。
こういう数字の出どころですが、これは人事コンサル会社が調査をしていて、私たち人事はその調査データを買うことで知ることができます。人材紹介会社の場合は彼等自身が転職者のデータを持っているのでそれをベースにすることが多いです。
このように市場価値は人ベース、市場価格はポジションベースなので、この2つに微妙にギャップがでることがあります。
なんでかというと、市場価格にはその人の「幅の広さ」や「ユニークな価値」はあまり反映されないからですね。
たとえば、
- システム開発ができて
- 経理もできるし
- セールスもできる
みたいなユニークでかつ幅広いスキルを持っている人の場合、今のところその市場価格を正しく教えてくれるツールがありません。
現状では、
「システムエンジニアとしての市場価格」
「人事としての市場価格」
「セールスとしての市場価格」
それぞれが個別に分かるだけです。
これら各職種ごとのスキルが生む相乗効果みたいなのははかれないので、こういう人は市場価格に照らし合わせると過小評価されます。
このケースの人も例えば【会計パッケージソフトのセールス】みたいな特定の範囲ではすごくたかく評価されそうですが、こういうのはちょっとニッチで統計的母数が少ないので、今のところ市場価格を適切にはかれないのです。
(将来的にはAIがレジュメを見ただけでこういうケースでもトータルな市場価格を教えてくれるかもしれませんが)
そんなわけで、あたり前ですが市場価格はただの物差しに過ぎないですし、物差しをみて過度に一喜一憂する必要もありません。逆に年収予測が高めに出すぎるケースもありますので。
※市場価格は表面的な役割と経験年数だけ見て出す統計なので、ちゃんと中身のある経験を積んでいないと市場価格だけが不相応に高くなる
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市場価値と現年収も違います。
現年収はあくまで【その会社の人事制度で色々な諸要素を処理した結果でてきた数字】に過ぎないので、現年収がその人の市場価値を正しく反映しているとは限りません。
…なんですけど、ここを勘違いされている方を意外と見かけます。つまり、
市場価値を高めよう→そのために現職で頑張って年収を上げよう
というロジックで動いてしまっているケースです。
現職固有の評価制度での評価を高めることと、
市場で広く評価されるスキル・経験を得ることは別です。
この二つは切り分けて、今の仕事が本当に市場価値を高めているかを見極める必要があります。なぜなら長期的により重要なのは市場価値の方だからです。
特にいろんな人を見ていて思いますが、年収が順調に上がっている時ほど、
「年収が上がっているのだから市場価値も上がっているはず」
という誤った認識=年収と市場価値の混同を抱きがちです。
例えばもし現職で課長になって年収が上がったとしても、部下無し管理職で特に新しいスキルを必要としないならそれは必ずしも市場価値アップにつながりません。
この点を正しく認識していると市場価値の停滞に気づけますし、停滞を抜けるために能力開発のフレームワークなんかを役立てることもできます。(それはまた別の機会にしっかり書きたいと思います)
目先の年収よりも市場価値を気にかけましょう!
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さて本筋とずれるので半分余談ですが、
- じゃあ年収は気にしないでいいの?
- 市場価値アップに注力してれば年収も勝手に上がるのか?
という疑問を持たれるかもしません。
実際のところ、市場価値と年収は強く相関します。
なんですが、会社の評価制度や給与制度と噛み合わないと市場価値が年収に反映されないケースも多々あります。
つまり放っておくと市場価値は必ずしも年収と合致しない。
このことに気づかないまま定年まで到達してしまうとちょっともったいないことになります。
なので時々チェックが必要になります。結果、市場価値と年収のギャップを埋めるためには転職した方が良いこともあるでしょう。
ただ強調しておきたいのは、年収額なんて実態のあるようでないような面があるということです。数千人という人達の転職を見ていて痛感しますが、運や巡りあわせで大きく変わります。上の方で「長期的には市場価値の方が大事」と書いたのはそのためです。
したがって表面的な年収額を気にするより、
- 長期的な市場価値を高める
- 自分の市場価値が会社で適切に年収に反映されているかチェックする
- チェックの結果、市場価値と現年収に乖離があると判断すれば転職を考える
方が結果的にはよほど長期的なリターンを見込める、ということです。
ひとまず今日はここまで。市場価値と現年収とのギャップのチェック方法はまた後日書きたいと思います。