今日は人事(HR)のキャリア解説・外資系編です。 今回はすでに外資系HRをしている人や、関心のある人向けに書いているので業界用語多めです。
なお先に人事全般について解説していますのでそちらからみていただくといいかもしれません。
外資系人事(HR)のトレンドは
まず外資界隈のHRのトレンドを概観しておきたいと思います。
この10年くらいの人事界隈のトレンドを一言で言えば、
商売に貢献できるHRが良いHR
そしてその貢献をデータで示せるのが良いHR
というものです。
既に外資にいる方ならよくわかると思いますが、外資ではもう事務処理機能はぜんぜん重視されていません。もっとメンバーのエンゲージメント向上とか後継者育成などといった、ビジネスの成否に直接影響する領域でバリューを出してほしいというのが今のHRへの期待値です。
このことを象徴しているのがHRBPを最重要視する昨今の風潮です。HRBPというアイデア自体はもう10年以上前からあって、その頃はP&Gとか一部の先進的な企業だけが取り入れていたのが、今ではすっかりグローバルスタンダードと化しています。ここ5年ほど日本でも導入している会社が増えました。
HRBPは9BOXなどのタレントマネジメント手法や組織開発(OD)のワークショップなどなど色んな手法でビジネス側に直接働きかけていくわけですが、とくにエンゲージメントサーベイが普及したことでこれらの効果を可視化しやすくなりました。
出典:https://blog.greenthumbs.in/just-completed-employee-engegement-survey
事業部長サイドとしても目に見えてサーベイスコアが上がってれば彼らの成果として上層部にアピールできます。この分かりやすい付加価値がHRBPが一般化した要因だと私は考えています。
この考え方はいわゆるCOEファンクション側も同じです。昨今タレントマネジメント系のシステムの改良がすすみ、データ活用がしやすくなりました。すると色々なデータでもって私はこの領域でこれだけビジネスに貢献しました、ということが明示できることが大事になります。そうするとクライアント=事業側のニーズをただしく把握できないとダメなので、ビジネスモデルとを理解したり事業部の上位管理職と話したりと、結局BPっぽい動きが必要になってきます。
外資系人事のキャリアパスと戦略
人事のキャリアについては基本的には下記の記事で書いたとおりです。
外資であっても基本的には同じです。自分の強みを強化しつつ(特化)、ある程度経験領域を広げておく(拡張)のが最大多数の方に有効です。
その上で外資系人事については上記のようなトレンドを踏まえたキャリアパスの多様化にどう対応するがポイントになります。
キャリアパスの多様化とはどういうことか。ひと昔前は外資系人事のキャリアは、簡単にいうと人事部長(HRダイレクター)を目指す上昇型キャリアか、それ以外のプレイヤー型キャリアの二択でした。ところが、上記のトレンドによってHRD以外の仕事もやりがい・難易度ともに右肩上がりになっています。年収も普通に1000万オーバーをめざせるので、かならずしもHRにおけるキャリア形成=昇格ではない、ということですね。
具体的なパターンを4つに分けて解説しましょう。
①ファンクションのマネジメントポジション
採用・研修・制度といったファンションごとの日本のマネージャーになり、ゆくゆくはAPAC全体・グローバル全体の責任者(アジア全体の採用ダイレクターなど)をめざしていくようなキャリアです。当然、上位ポジションにいくほど高い英語力が必要になりますし、アジア圏の同僚と競争なので大変は大変です。その分年収は2000万あたりまで目指せます。
②ファンクションのスペシャリスト
人事システムのプロ、研修のプロといった具合に領域に特化したスペシャリストをめざす。現場にちかいほど実際の社員の声を聞いたり感謝されたりといった機会が増えますから、これも素敵なキャリアパスです。繰り返しですがこのパスの場合は単なる事務屋にならないことと、自分の強みを差別化することを考える必要があります。
③HR Director (人事部長)
日本における人事部門の責任者をめざすパスです。HRDとかCHROみたいなタイトルになります。また中小規模の外資系だとHRDといってもHRBP兼務のようなイメージになることも多いです。この場合、さまざまなファンクションを理解していることが求められるので、ある程度計画的にキャリア構築する必要があります。
④HRBP
上述したようにHRBPが重視される昨今ですが、BPは求められるスキルの水準が高いかわりに報酬もかなり高いことが多く、多くのシニアレベルの人たちを惹きつけています。だいたい1000〜1400万円くらいがボリュームゾーンで、ダイレクターレベルとあまりひけをとりません。またHRBPはビジネスへの具体的な貢献が明確なのでやりがいを感じやすく、これも人気を集める要因になっています。
それぞれのキャリア戦略
これを踏まえたキャリア形成戦略ですが、①②のファンクション系キャリアの場合極端に狭いスペシャリストになりがちなのがリスクです。たとえば予算縮小による採用担当・研修担当ポジションの削減、あるいはオペレーションをシェアドサービス化し、国外に移管するためオペレーション・ペイロール関係のジョブがなくなるなどです。
なのでリスクヘッジのためには、
- さまざまな業界経験を身に着けて1社でポジションがなくなっても速やかに次に移れるようにする
- ポジション削減されても絶対に残したいと思われるくらいの圧倒的なバリューを獲得する
- メインの他に多少他のファンクションも経験しておく
といった工夫が必要です。
一方で③④HRBPや人事部長系キャリアの場合、いずれもコンサルタント的な役割期待があるので広範な人事経験をつける必要があります。その点外資はジョブローテがないことが多いので経験領域の拡張を意図的に仕掛けていく必要があるでしょう。このためHRの場合ある程度転職が多くなるのはしょうがないと思うべきでしょう。
外資系人事・おすすめ転職エージェント
エージェントの活用については、まずは上記のようなキャリアパスについて相談できる相手を確保することが望ましいですね。その意味でできたら日本人担当者をつけてくれるエージェントと付き合いたいところです。
まず基本的な登録先としては下記の記事に挙げたパターンで良いと思います。
ここでも簡単にまとめておくと、ある程度英語が問題なさそうなら、
①若手(〜35歳くらいまで)
リクルートエージェント(解説・公式サイト )
+ロバート・ウォルターズ(解説・公式リンク)
②中堅〜管理職
JACリクルートメント(解説・公式サイト)
+ロバート・ウォルターズ(解説・公式サイト)
もしくはHays(解説・公式サイト)
もしくはエンワールド(解説・公式サイト)あたり
みたいな感じですね。あと個人的にRGFというエージェントもおすすめです(すみませんまだ紹介記事をかけていません)。なぜか前々から人事系に強い印象があるので。ここはリクルート系ですがリクルートエージェントとは別会社で、コンサルタントも外国人が多いです。知り合いもいたりしますが、ベテランコンサルタントも多くなかなか良いと思いますね。個人的に好きです。
あと私自身の転職でも使ったことがありますがヘイズはやはり強いです(ただヘイズは自分のおっとりした性格にあいませんでした)。このあたりは好みで直感的に決めて良いと思います。正直にいってどこもそんな大差はありませんし、しょうじき担当間の差異の方が大きいです。