●英語力をつけることでどのくらい転職しやすくなるの?英語力が有利になる職種は?
●年収アップにつながるって本当?
●AIや通翻訳アプリの精度が上がってきてるけど英語力は無駄にならないの?
・・・現役の外資系採用マネージャーの私がこうした疑問に答えましょう!
英語を勉強している社会人の方の多くは、「多くの会社で通用する人材になりたい」「年収アップさせたい」・・・要するに転職市場価値(マーケットバリュー)を高めることを目的としていると思います。
では英語力はどのていど市場価値に結びつくのでしょうか?
またGoogle翻訳をはじめとした機械翻訳の進歩が著しいなか、英語力は今後も価値を保てるのでしょうか?
今回はこのあたりを解説していきたいと思います。
【目次】
英語力の市場価値をどうやって測るか?
以前書いたように市場価値というのは年収とイコールじゃないですし、測定の仕方はなかなか難しいです。
そこでここでは便宜上、「転職のしやすさ」「年収アップ」という2軸で見てみます。
英語力による転職のしやすさ
まず「転職のしやすさ」から考えてみましょう。先に結論を書くと世の求人の7〜10%くらいの求人は、英語があることで有利になります。
英語力によってどれくらい転職しやすくなるかを明示したデータってありそうでありません。そこで大手求人サイト「リクナビNEXT」の約4万件の求人のうち、英語力を活かせる求人の割合を調べてみました(注1)。その結果がこちらです。
リクナビの求人のうち、英語力を活かせる求人の割合・・・約7%
これら英語力を活かせるの求人には英語力が【必須】のものと【尚可】のものがまざっています。
- 【必須】のものであればそもそも英語力がないと面接にも呼ばれませんので、その時点でライバルが減ります。
- 【尚可】のものも、募集する側としてはできれば英語力のある人を採用したいはずなので英語のできない候補者より有利になります。
いずれにせよこれら7%の求人においては英語力で転職がしやすくなると考えていいでしょう。
なおこの数字はあくまでリクナビNEXT上のものにすぎません。外資系にはリクナビなどの広告媒体を使わずエージェントメインで採用活動している会社が多数あります。
実際はもっと多くの求人で英語が役立つはずです。元エージェント・現採用担当としての感覚値としては10%くらいが英語求人じゃないかな、という感じです。
職種別の英語求人割合
こんどは職種別に見てみましょう。
上記リクナビの英語力を活かせる求人(英語求人)の職種別割合がこれです。
職種 |
英語求人の割合 |
企画営業・法人営業・個人営業・MR・その他営業関連 |
9% |
エンジニア(機械・電気・電子・半導体・制御) |
7% |
ITエンジニア |
5% |
Web・インターネット・ゲーム |
4% |
財務・会計・経理 |
11% |
総務・人事・法務・知財・広報・IR |
10% |
一般事務・アシスタント・受付・秘書・その他事務 |
14% |
物流・資材購買・貿易 |
19% |
マーケティング・宣伝 |
16% |
サービス・販売・外食 |
11% |
管理職・エグゼクティブ |
12% |
全て |
7% |
物流などのサプライチェーン系、マーケティング系、事務系に英語求人が多いことがわかります。
ちなみにITエンジニアだと英語求人は5%ほどにとどまっていますが、
年収701万円以上に絞ると11%に、
年収1001万以上で16%に上昇します。
つまり英語力があると高年収求人にアクセスしやすくなります。
英語力がどの程度年収アップにつながるか
続いて英語力がどの程度年収アップにつながるかをみてみます。
これについては色々な語学学校やエージェントがデータを出していますが、
ここではやはりリクナビ内の高年収が見込める求人のうち、英語力を活かせるものの割合をみてみます。
理由はさっきと同じで、英語力が活かせる求人(英語求人)なら英語力があることで他の候補者より選考で優位に立てるからです。
結果はこの通りでした。
面白いのは年収700万までは英語求人の数は増えないのですが701万以上・1001万以上と年収帯が上がるにつれ英語求人比率も上がる点です。
またなんだかんだで年収1001万以上の86%は英語無関係の求人なので、英語なんて頑張らなくても高年収を目指せるのは間違いないです。
とはいえ日本人で英語力の自信のある求職者の少なさを考えると、英語求人で優位に立てるのはやはり大きい。もう10年以上前ですが経済評論家の勝間和代さんは1時間あたりの勉強で2万円相当の投資効果と言っていました(「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」参照)。
元エージェント・現採用マネージャーの私の実感としても英語の年収アップ効果は大きいです。
英語の市場価値の今後の見通し
さてAIの進化がとどまることを知らない昨今、英語力の市場価値は今後どうなるのか?結論からいうと、高い英語力は今後も市場価値につながります。そのことを解説しましょう。
そもそもなぜ英語力に需要があるのか?
一言でいうと社内コミュニケーションのためです。
詳しく言うと、グローバルにビジネスを展開する時の本社ー子会社間のコミュニケーションのためのニーズです。つまり、
日系の場合
本社(日本)⇆ 子会社(海外)
外資の場合
本社(海外)⇆ 子会社(日本)
この、⇆の部分をしてもらうために必要だからです。
こう書くと、
「日本企業が英語できる人を雇うのは英語を使って現地でビジネスをさせるためではないの?」
と思われるかもしれません。じっさい商社なんかは英語のできる日本人を海外に駐在させて、直接商談をさせたりしています。ですが、まぁこれは半分研修目的みたいなものでそんなに本質ではないです。
どういうことかというと、海外・・どこでもいいですが例えばインドネシアでビジネスをするとします。
ここで商談するだけならむしろ現地のインドネシア人の方がうまくやれます。ところがいざ日本の本社にレポートとかをさせるとなると、インドネシア人で日本語のできる人材なんてぜんぜんいないので、通訳だ翻訳だと余計なコストが発生してしまう。
そうすると、日本語のできるインドネシア人を雇うより、
・英語のできるインドネシア人(たくさんいる)
・英語のできる日本人(たくさんはいないがそこそこいる)
をセットで雇って、両者の間で英語でやりあってもらう方がまだ経済合理的だという話になります。こっちが英語ニーズの本質です。つまり社内コミュニケーションなのです。
社内コミュニケーションには機械翻訳では足りない
社内コミュニケーションとなると、同じ会社・同じチームの一員としてチームワークよく仕事をするために、単に伝えるだけじゃないコミュニケーションの情緒的な側面(情緒価値)が重要になります。
コミュニケーションの情緒価値については以前一度触れました。
つまり多少下手な英語だろうと「自分の声で」「自分の言葉・ニュアンスで」しゃべってること自体に意味が生まれるんです。
たとえば実は外資系企業に勤めていると、本社から外国人ゲストがくるたびにディナーに行くことになります。あるいは「チームビルディング」と称したワークショップの類をやる会社も多いですね。
「飲みニケーション」なんていうといかにも古くさい感じがしますが、外資系企業の社員にとって、外国人ゲストが来日したときにオフィスを離れてオフの交流をするのは非常に重要な仕事です。
なぜ外資がこうした場を大事にするのかといえば、国籍・文化的バックグラウンドの異なるメンバー同士が人間関係をつくる難しさを理解しているからです。とくに普段は電話やTV会議でしか話さない同士だとなおさらです。
そんな理由があってわざわざやってる飲み会の場で、いちいち翻訳アプリを使って会話してると、一言でいうと興ざめだし肉声でしゃべるのに比べて信用を得にくい。
また日系・外資を問わずグローバル企業では多国籍採用が進行しているため、こうした企業で働こうとすると英語のできる色々な国の人たちと同僚になります。
それでこういう同僚たちと同じ飲み会に参加することになるわけですが、ここでも英語力が同僚との関係構築の成否にはっきりとした差をもたらします。
(ちなみに私も現在進行形でこの苦労を抱えてまして、中国人やドイツ人の同僚とお酒飲みながら世間話するのにヒィヒィ言ってたりします)
これが英語力が今後もAI・通翻訳アプリに代替されない理由です。関係構築です。繰り返しですが、自分の声・言葉で発信できることや同僚と冗談を言って笑いあえること自体に意味があるので、これはAIでは補なえない価値として今後も残ります。
さてここまでの話の前提には、「世界には英語なら話せる人がたくさんいる」ということがあるんですが、実際のところ日本以外の国々の英語力はどんなもんなのでしょうか??
世界には英語話者は意外と多い
インドが英語公用語なのはよく知られていますが、実はアフリカ最大の人口を擁するナイジェリアは英語公用語の国です。
アフリカはフランス語のイメージが強い感じがしますが、実はけっこうな数の国が英語公用語です。彼らは訛りは強いですが上手な英語をしゃべります。同じ国でも民族が違うと言葉が違うので、公用語として英語を採用している国がけっこうあるんだそうです。
また「公用語にはしてないものの英語が得意な国」というのがかなりあります。
世界経済フォーラムのサイト(https://www.weforum.org/)に良い感じのインフォグラフィックがあったのでいくつか引用しましょう。
上記サイトに出てくる「英語能力指数」という数字があって、これが60以上だと国として英語が得意ということなのですが、トップ10がこんな感じです。
Which countries are best at English as a second language? | World Economic Forum
オランダなんかは本当に英語がよく通じます。
これのアジア版がこちらです。
青と濃い緑が英語能力指数が60以上です。高い順にシンガポール・マレーシアと続き、3位に最近オンライン英会話で有名なフィリピンがランクイン。(グラフィック小さくてすみません)
また中国は現状日本とどっこいどっこいですが、大量の留学生を欧米圏に送っているので現在進行形で英語スピーカーが量産されています。
こんな状況なので、すでに世界にたくさんの英語上手な国々がある以上、おそらく今後も英語はグローバル企業の社内コミュニケーションツールとして重要性を維持し続けます。したがって英語力は今後も市場価値を持ち続けるでしょう。
まとめ
ということでまとめると、
- 英語力は市場価値につながる
- 英語力のニーズの本質は社内コミュニケーション=関係構築
- グローバル企業では国籍・文化の違う人たちとの関係構築のためにナマの英語力が必須
- 英語スピーカーは非常に多く、今後も英語は社内コミュニケーションツールとして価値を持つ→英語力の市場価値も維持される
ということです。今英語をがんばって勉強されている方は自身を持って続けてもらえたらと思います。
関連記事です。海外MBAで年収が上がるのは英語力アップによる面が大きいですね。
注1:
2020年1月1日時点での40414件の求人数を調査対象とし、「英語・中国語など語学を活かす」に該当するものの9割を英語力を活かせる求人として数字を出しています。